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◆ 中国見聞録2007/06/11 (Mon)

 光化学スモッグが発生し問題になっている。中国の影響だろう。中国は京都議定書にも発展途上国の立場を名目に国際的な責任を回避しているが、環境問題は自らの命の問題なので、現地で見る限り、思った以上に真剣に考えている。中国は世界一の外貨準備高の国に成長し、軍事力も増強して、周辺国から恐れられる大国になったが、内実は、問題も多い。

 今回は「武安」を訪問した。ここは、北京から電車で500キロの距離にある。北京、天津、青島と同等の距離にある重要な都市だ。中国は物価が安いので、500キロの距離をタクーで走った。若い頃、モロッコの砂漠をタクシーで、10時間程かけて走ったり、病気が進行し、自覚症状を感じた時期には、二度とアメリカの地を踏めないので、水野に頼んで、ロスからサンフランシスコまで、車で走った事もある。去年は韓国のソウルからプサンの距離を往復し、病気の体でも、5時間くらいは大丈夫だ。

 北京から5時間ほど走り、目的地に着くと、地方政府の関係者が3名、鉱山のオーナー、製鉄の関係者が待機していた。特に製鉄所の粉塵、脱硫、脱リン、水処理、排水関係など、新しいプロジェクトの打ち合わせが持っていた。鉄関係はエンジニアリングの仕事になるので、新日鉄に頼む予定だが、水処理関係は私の専門分野なので、ここの状況を聞いた。この地方は鉄鉱石が産出し、2000年間地名が変わらない豊かな土地らしい。中国の経済成長で、鉄の需要が伸びて、外国の鉄鉱石の価格が上昇し、中国国内の鉄鉱石の価格が採算に乗り、鉱山のオーナー達は一躍、莫大な富を得た。中国でも、新しい資源財閥の登場で、老朽化した製鉄所を買い取り、現在、新しく製鉄所を建設している。私は新日鉄で色々な仕事を担当した。圧延工場、試験所、研究所、技術企画、その後、ステンレス、冷延、表面処理の会社に移り、鋼管まで担当した。辞める2年前は新規事業を担当して、極箔、超微子、ガリウム砒素の開発にも従事した。自我自賛だが、社内の猛反対の中で、日本初の67ミリ幅の極薄圧延機を開発した珍しい経歴がある。その後、技術コンサルタントの仕事を開業して、水の仕事を選んだ。超純水装置、水の自販機を世にだし、全国的に普及する糸口を作った。紆余曲折があったが、水を職種に選んだ判断は良かった。世界的に、環境が騒がれだし、水の仕事は幅が広いので、個人でも大企業でも取り組める仕事で小資本でもビジネスチャンスがつかめる職種である。

 今回、20年ぶりに製鉄所の建設現場に立ち、昔の記憶が蘇えった。久々に装置産業をみたが、豪快な仕事を思い起こした。日本も世界2位の経済大国になったが、中国を訪問する度に、追うものの強さ、勢いの違いを感じてしまう。日本は、バブルが弾けて、厳しいリストラを経験し成熟社会になったが、多くの貴重な人材を見殺しにして、企業の反映だけが残った社会で、私は今の日本には疑問を持っている。日本と言う宝石の表からは見えない裏に傷が広がり、亀裂が進行中の社会にさえ見える。一番大切な人材を切り捨て、効率主義、儲け主義が台頭し、日本人の最大の資源である“ものつくり”と言う心の財産を破壊させた。人間の価値が崩壊し、国の基本が崩れて、国を国民が信用できない状態は悲惨だ。年金、介護の両輪が、崩壊し、一番大切な老後の生活が崩れる事態は、人生の危機である。日本経済は順調に見えるが、中国経済の恩恵でもある。中国は、オリンピック、万博を控えて発展を続けているが、バブルはバブルとして、弾けながら、順調に成長すると思う。彼等とビジネスして実感するが、彼らは図太いし、頭も良く、行動も早い。今年の大学入試の数も1000万人と膨大だし、数では圧倒される。13憶の民の生活水準を高めるには強大なエネルギーが必要になるが、水と空気も大きな課題になる。沼、河川、の半分以上が汚染状態で、水道水は、直接は飲めないし、中国の発展の足かせになる。また、汚染された水でつくる農作物も危険だし、中国産の食品に問題ある背景は、水問題だ。私は水の専門家として、中国を応援したいと思っている。日本では空気と水の確保が容易だが、温暖化が進むと、雪解け水が不足して、首都圏でも水不足が予想される。現在、地盤沈下が問題になって、井戸水の利用を制限しているが、個人レベルでは井戸水の利用を促進しないと首都圏でも水不足になる。経済の成長は、環境破壊を招く。温暖化、大気汚染、水質汚濁、食糧危機、飲料水不足、省エネルギー、これ等の問題は意識の改革が欠かせない。日本の環境技術に期待されるが、日本の企業は合理化が進み、余裕がない。日常の仕事に忙殺され目先の事しかこなせない状態だ。他国を教える余力を身に付けないと世界に通じる企業には成りえない。このままでは日本の技術は衰退してしまう。日本で、安い製品のほとんどが、中国製だ。日本製は高級な分野に限定されているが、庶民の願いは、安さ+安全な製品が欲しい。中国が環境技術に投資をして、賃金も上がれば、安い製品の供給は出来なくなる。世界中の消費者が「安い物を買い求める」以上、このニーズに合って今後も矛盾の中で、成長すると思う。コピー大国では生き残れないが、コピーからの脱皮は、人間の欲望が低価格を望む以上、中国ビジネスは廃れない。私はあえて、彼等に当社の商品をコピーさせる準備を始めている。

 広島から川の水を時間75トン浄化して、鯉の養殖の補給水にしたいと言う依頼があった。予算の都合で、頓挫したが、受注の成否より、この業者に興味がある。中国からもこの規模の話があるので、破格の予算で設備を提供し、提携を考えた。理由は、中国の食料事情だ。魚の養殖は新しい産業になるし、海洋関係に知見がありそうなので、縁があれば仕事になるだろう。6月末に時間数トンの小型の膜処理装置を中国に送り、水の評価テストを行う。順調に進めば、北京に拠点が出来るだろう。

 印旛沼の周辺に産廃の捨て場が増えて不安になった住民の方が、酸素発生器、遠赤BOX、膜浄水装置、RO浄水器など、一式を購入された。環境破壊の自己防衛だ。反応を聞くために訪問したが、全て、大当たりだと喜んでくれた。私もこの機械を使って元気に働けるので、鶏の飲料水に酸素水を使うように進めた。数ヶ月経って様子を聞くと、鶏、卵、臭気、堆肥、全てに良好だと報告が届いた。名古屋の歯医者さんが、滋賀にエコタウンに参加する。ここで使う井戸水の浄化設備を当社に依頼して来た。来週あたり見学に行きたい。東京の防災用の浄水機の設計が最終段階に入った。神奈川のS神社から時間2トンクラスの大型装置を受注し、完成したが、上手く出来たので、標準品にしたい。ランドロームに日本初の酸素水の自販機を納入する。うまく行けば話題になるだろう。事務所に酸素水の混合器の見本も作った。佐渡島、福岡、松戸、つくば、埼玉、から購入以来がある。松戸の家を訪問したが、予想通りの豪邸だった。鯉が泳ぐ池の浄化も頼まれた。池、川、色々相談があるので、忙しいが難しい仕事でも逃げずに取り組む決意でいる。