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◆ 水による水を使った殺菌システム2006/10/09 (Mon)

 科学・学園都市、つくば市に関わりを持って20年近くになる。私達の様な超純水のプラントメーカーが科学・学術の街で仕事をするには、常に先端を走る気概と研鑽が欠かせない。環境は自然に恵まれ、田園風景と都会の香りもして、程好い刺激がある。この地は研究都市らしく、技術者や専門家が多いので、技術がないと、見抜かれて信用されない。今年は大きなプロジェクトを持ち込まれたが、成約しなかった。顧客の姿が見えなかったし、相手に信用性が欠けると、無理は出来ない。成約には至らなかったが、充分に準備が出来て、装置の開発と技術力は進化した。私は売上げも欲しいので、規模の大きなプロジェクトは魅力があるが、同時に、時間と資金が必要になる。大きな売り上げに慣れると、小さな仕事が見えなくなるので、根本は技術の進歩を優先にしている。技術の進歩なくして永続的な成長は期待できないから、今後も、目先より、慎重に顧客を選んでいく。膜式浄水製品も揃い、開発は一段落したので、身近な仕事も考えている。当社で仕事を希望する人も増えて来たし、新しい仕事を小さな仕事でも、採算が出る仕組も考えている。

 一つには、新しい自販機の製造である。先日、NPOの関係者から新聞記事を紹介された。東京のベンチャー企業が奨励賞を受賞した記事で、内容は、電気分解で殺菌水をつくる技術で、衛生殺菌システムの販売と紹介されていた。似た技術は、森永、三洋、旭硝子、新日鉄等30社以上の企業が参入している。仕組みは3%〜8%の塩酸を電気分解して殺菌効率を上げるシステムで、15年前に強酸性水が日本テレビで紹介され、大ブレークしたが、このニュースにも私が日テレに紹介して報道された。昔から、この技術が好きで関わって来たが、実は8年前からこの技術をアメリカから導入して、自前で膜の洗浄に使っている。私の意見は、騒ぐほどの技術とは思えない。当時は電気分解水で殺菌が出来る事は新鮮さがあったが、信用されなかった。最近、ホテルの殺菌用にも使い、臭気もなく、好評である。

 15年前に水の自販機を日本の市場に投入したが、このプロジェクトは失敗した。その後、全国に水の自販機は置かれたが、私が、この事業を縮小したのは菌の問題が解決されなかった。法的には、料理水の無料配布の形をとっているが、実際には飲料水として、使われている。現今の自販機は滅菌の技術は紫外線殺菌ぐらいで、乏しい。表面化していないが、日本中で自販機から、菌が検出されて、深刻な問題になっている。スーパー名で、ランドロームと言う会社がある。オーナーに呼ばれた。水が悪いので、購入した自販機が使えない。客の要望も強いので、動かす対策を相談された。不思議な話である。水が悪いので、高い自販機を購入して客に提供する目的だが、水が悪いので、使えないとは、浄化能力が不足しているのだ。地元スーパーのカスミの担当者も自販機の中身はガラガラで、これで大丈夫かと私に聞いていたが、装置としては貧弱である。しかし、店に設置してある店舗と、無い店舗の集客数に差があって、集客の為に続けている。ランドロームの装置も調べたが、停止したのは、正しい判断だった。機械は簡単に作れるが、水の事を熟知しないで造るので、当然問題になる。大阪のマイカルに自販機を納入したが、導入検査で3000個の菌が検出された。装置には紫外線殺菌装置が組み込んであったが、効果がなかった。調査すると、店内に多く菌が浮揚していたのが原因だった。特に、野菜売り場が凄かった。農地から運ばれた土壌に菌が付着し増殖するのだ。岡山に大手の漬物の会社からも相談があった。健康志向で減塩漬物が売れる。塩分を減らすので、付けダルの中は菌が増殖して困っていた。新潟の会社からも同じ質門だった。漬ける白菜の洗浄は難しい。芯の中まで充分に洗えないし、漬けるだけで、殺菌出きる殺菌水が欲しいと言われた。顧客の要望もあって、電解還元水の研究を続けた。水による水を使った殺菌は当社の社是に近いし、魅力的だ。龍ヶ崎に豚肉処理施設がある。社内を見たが、肉の消毒にも殺菌水のテストをしていたが、現場の意見は好評だった。塩素を使うと、肉色が変わる。魚の解体も塩素殺菌を嫌う。この水殺菌は変色が少ないので喜ばれる。アメリカでO−157がほうれん草から伝染したが、菌は梱包パック内で増殖する。福岡の旧九大の近くに魚を解体し梱包する会社がある。ここも相談されて訪問したが、ライン上で殺菌したい。菌が検出されると、全てを回収する事になる。この工程でも使える。ランドロームのオーナーは、無料で水を配り菌が出ると責任を負う。少し、矛盾を感じると語っておられた。ランドロームに殺菌システムを組み込んだ自販機を置いたが、動いている。報道で殺菌水が注目され、タイミングは良かった。
 イトーヨーカドーの自販機を見て、何時も思うのだが、ボトルのキャップを紫外線ランプの口に差し込んで、消毒するが、手も洗わずキャップに触れて、数秒で殺菌、消毒するが、菌が死ぬとは思えない。私は紫外線ランプを販売しているが、専門家の目から大いなる疑問である。無いよりはましの論理は菌の恐ろしさを知らない行為だ。残留塩素の無い水を汲むし、危険過ぎる。食品の場合は、産地偽装で大騒ぎするが、水に無知な人が大半なので、騒がないだけの事だ。

 水殺菌方が注目されだしたので、応援の意味も込めて、塩素殺菌との違いを一つ述べる。塩素はガスで、揮発性が強く、臭気が出て、飛んでしまう。この臭いが嫌われて、水道水が嫌われる一番の理由である。水の殺菌システムの特徴は水に殺菌液が溶け込み、気化しにくいので、残留量と残留期間が安定し殺菌効率が高い。一説によると、有効塩素の5倍のデーターもある。私達の水の分析は、水の第一人者の栗田工業の分析センターに頼んでいるが、営業の担当者が、水の衛生システムの記事を見て、自販機と岩盤浴、足湯等で、菌で汚染されて問題になって相談を受け、この水を使えないかと聞きにきた。病院の看護士の親族が温浴の仕事をしたいと相談があったが、菌の問題があるので、やめる事を奨めた。菌の問題が報道されだし問題になりはじめたが、この事は常識である。電解殺菌の話になり、当社の業務用の装置を見せた。殺菌のニーズがあれば、私は電解の電極と超純水の装置を組み込んだ自販機をつくる考えも話した。この装置が出来ると、市場性があるかも知れない。私のショールームにMF膜、RO膜、脱気膜を組み込んだ最新の自販機があるが、EDIを組み込めば超純水装置になる。抵抗値で5MΩ〜15MΩの超純水が簡単に出来る。電解装置を改良して統合すると、超純水と殺菌水のコラブレーションになる。15年前の自販機は純水を汲める方式にした。用途は広がったが、イオン交換樹脂を使用したので、樹脂の再生に大幅な費用と大変な作業になった。その間に同じく電気分解で超純水が出来るEDIが認知され、電解水も世論受け、時期到来と思っていたが、栗田の営業の担当者が、面白い意見を語りだした。社内で、水の殺菌水の事、EDIの話しをしたが、専門家集団の中でも、多くの人は意味すら知らなかった。ハセッパ水、微酸性水、電解水、EDI、我々は毎日、超純水装置の仕事で語る言葉は実は通じていなかったのだ。宣伝も兼ねて超純水と電解水が汲める自販機を造り体験して貰う事が宣伝と普及に役立つと判断した。他社では特許の関係で造れないし、競争力はある。5MΩ〜15MΩの超純水を提供すると、超純水の測り売りが可能だ。アメリカでは店頭で買えるし、個人の薬や化粧品、化粧水は原料を買って自前調合する。企業でも超純水装置が買えない会社はテスト用で買う。時折、純水を買いたい顧客がいるし、洗浄力と有効塩素の5倍の殺菌水が買えると、店内の床面の洗浄、野菜の付け洗い、配管の中に流せば全店内でジャブジャブ電解殺菌水が使える。清潔店舗の印象が持たれた事が、新しいセールスポイントになる。この仕事に大手企業が続々参入して、濃度50ppmを20リットル約1万円で販売し、レストラン等の殺菌用に使われている。濃度2000ppm濃縮殺菌液で、4リットルを1000円位で小売したい。介護施設、幼稚園等のプ‐ル、アトピー、純水で薄めると化粧水にも使え、体を拭く介護、美容院でも髪の洗浄と殺菌に使えば、洗剤の量も減る。洗濯にも有効である。野菜、魚の洗浄、各種パウダー製品の溶解にも効果がある。災害時には消毒用に薄めるとジャブジャブ大量に使えるし、色々考えられるが試しに投資をして、急いで、装置を完成させたい。
 販売の形態は栗田とランドロームのオーナーと相談して決めたい。流通分野の自販機の販売はランドロームのオーナーを通すと約束をしているので、この仕事には栗田工業の分析能力が欠かせないので、プロジェクトに参加を希望している。話が進めばまずはランドロームに設置して市場調査を行い、ノウハウを共有する。当面は、野菜の洗浄などに使用し、使用前と使用後の菌の状態を栗田が分析し結果をインターネットで公表する。衛生の格付けもする。野菜売り場は新鮮さが売り、農地からの菌が付着しているので、菌の調査を定期的にして、店全体の防菌の格付をしたい。格付けは、新しいセールスポイントになるし、ISOの基準より費用も少なく身近な基準になる。NPO法人水屋安全な水を考える会を格付け会社に使うのも一案である。役割分担が少し見えてくる。当社は開発、分析は栗田、販売はランドロード、格付けはNPO法人だ。少し、装置の概要に触れると、自動洗浄式のMF膜で前処理、活性炭、RO、EDIで構成する。電解酸化殺菌水は濃縮液5000ppmが出来るので、必要な濃度に希釈し、1000ppmでも販売出来る事を考えている。市販の還元水の販売価格より、大幅に低コストで買えるし、理解されだせば、有望商品になる。事業が軌道に乗れば、栗田にOEMで装置を供給する。勿論、従来の自販機の機能も着けるし、従来通り販促用に安全な水として使うのも良いと思う。都内のプール、東急のプールなどを見たが、すでに導入されて、病院でも認知されて殺菌に使われている。長年温めて来た技術を公開して話題を提供したい。新しい仕事は考えるだけでも楽しい。
 
 東大の研修生が新しい私の提案を作りあげていると報告があった。新しい人材を糾合して、新しいビジネスを育てたい。それが、唯一の生き甲斐だと思う。感謝する日々である。