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■ 輻射パネルで新会社を設立2013/11/15 (Fri)

川手会長様
早速、暖かいお見舞いのお言葉有難うございます。タクロバン市の惨状を見たら無責任な言葉は言いませんが、幸いにも私の住んでいるタガイタイは台風の進路から外れて、事なきを得ました。今回も現場のシーンをTVで見た途端、頭に浮かんだのは貴社の緒製品です。直ぐ関係機関に働きかけて具体化するように動いて見ます。何卒、宜しくご指導の程お願いします。

 フィリピン在住の方へ、お見舞いを申し上げると共に、当社でつくった、電気が使えない場所向けにつくった浄水器を送るとメールした。バケツに水を入れれば、膜を通って濾過される仕組みで、電気が安定して使えない、ネパールやブータン向けに開発していた。簡単な仕組みだが、「膜」なので精密に浄水出来、急場では喜ばれると思うので、安い浄水器にも力を入れたいと思った。

 輻射パネルの製作を始めて早3年たった。開発のコンセプトは「遠赤、シンプル、ワイド」だった。11月10日第1号をつくば市の新築住宅に納入した。様々な改良を重ねて、目標のレベルに達しつつある。徐々に仮販売して、営業につなげてみたいと思っている。そもそも、客先からの相談で始めた仕事で、体を温めることには興味を持っていたので、ほんの冒険心から始まった。柏市にある陶板浴の施設を訪問して遠赤の効果を体感し、つくば市の温浴施設を見学して熱源を学んだ。遠赤サウナを調べに中国へ出向いたり、韓国からはオンドルを輸入したりして得たノウハウもあって、輻射パネルの製作に役立った。

 つくばの研究者と知り合って、そのつながりで室内空間の浄化に詳しい学者から、遠赤能力の高い粉末を紹介されたので、これを塗料に混ぜてみた。独自で改良した遠赤塗料があれば、自社製パネルになると思い、時間をかけて完成させた。冬は温水を流して遠赤暖房、夏は気化熱を利用した冷房になる。簡単で誰でも出来る装置なので、細かい部分に気を使った。どうせ取り組むのなら、水と並ぶ息の長い仕事にしたいので、シンプルな機能とデザインした。

 仕事は、新たな発見と改良の繰り返しで、生き物のようだと思う。私は、下請けの仕事では生きられないと分かっているので、自前の商材を生み出すために命を懸けて来た。この輻射パネルは、空調と並ぶ仕事になると思う。風による暖房は、室内の埃を巻き上げるし、頭がぼーっとして気分が悪くなる。冷風では、手足が冷えたり、肩が凝ったりするので、嫌う人も多い。

 古くからの日本家屋は、湿度対策に主眼が置かれていて、高温多湿の世界を如何に快適に過ごせるかにあった。今は、“断熱”が大きなテーマに変わり、住宅の気密性が高くなっているので、空調分野も大きく変化するタイミングでもあると思う。テレビと同様、エアコン市場も、中国、韓国に追い上げられて、アメリカでは猛追に合い、シェアを奪われている。空調程度の仕事は、部品さえあれば誰でもつくれてしまう。ヨーロッパでは、輻射パネル式冷暖房が主流だが、日本人にはなじみが薄いので、日本では輻射パネルの冷暖房の普及は遅れている。

 冷暖房は、一世帯に最低一台備わっている巨大な市場で、エネルギー消費量も多い。東電が元気な頃は、政府と東電が組んで原発を普及させるため、とにかく電気を消費させることを目指した、狂気のエネルギー消費国だったが、東電が崩壊し、省エネが日本の命運を握る逆転現象が起きている。当社はこの動きを先取りして、パネルの原材料の入手、遠赤塗料の改良と塗布技術の習得に取り組んでいる。時代は大きく様変わっていて、大手企業でも一皮むけば問題だらけだし、風評で一気に市場から追い出され、小さな会社でも品質が見込まれたら、一気に追い風となる時代でもある。当社の超純水の仕事も、地道な努力が実って、今年は大型装置の納入も実現した。

 輻射パネル暖房の、湯たんぽのような温かい感覚は、肌感覚のない人には物足りないのか、正直反応はイマイチだが、夏はさわやかで、冬はほんわかとした優しい温かさに包まれると、高齢者は勿論、女性や子供にも喜ばれると確信している。

 装置の製作にあたって、知り合いの宮大工さんに協力を求めたが、「注文さえもらえれば、図面通り製作しますよ」という程度の反応だった。私と組んでも儲からないし、言われた仕事をしてお金を頂ければと言う感じだった。これからは、自ら考えて提案するものづくりしか残れないと言っても通じないし、受け身の姿勢なら付き合えないので、当社独自で取り組むことにした。水野は私の意図を受け止め、改良を重ねて縁故販売のレベルにまで到達した。他社でも、遠赤暖房が盛んで、室内の壁にも遠赤塗料を塗り、遠赤波長で温めるシステムを販売する会社が伸びているが、費用がかかり過ぎて、この方式の将来性は低いと思った。

 室内温度を均一に保てる装置として普及させたいと願っているが、ヒートポンプも、冬の厳しい寒さには限度があって、冬は捕助ヒーターと遠赤の組み合わせが必要になる。
 昨年、顧客であるカミヤタマゴさんに、大型のヒートポンプを納入した。夏場、養鶏場を冷やす為に冷水の使用を勧めたが、納入が遅れて秋になってしまった。温冷を切り替えて、冬に運転を始めたが、寒さの中では、配管からの放熱で思った成果が見られなかった。今年の夏は猛暑だったが、大型のヒートポンプで冷水をつくったら、効果ありで喜んでいる、という連絡があって、私も安堵した。
 カミヤタマゴさんには、大型の純水装置、酸素発生器、大型の超音波洗浄機と、最先端の装置を“押し付けて”いるが、何しろ装置の立ち上げが初めてなので、難航することも多々あった。それでも、神谷社長自ら、これらの立ち上げに尽力して貰ったおかげで、次々と好実績を生み出した。「安心、安全」に、莫大な投資をする方で、東京全てのデパートに販売して好評だと聞く。取引先が、販売店との信頼関係を得て伸び、当社が力添え出来ていると思うと、“押し付けたかい”があって、とても嬉しい。

 輻射パネル関連製品の販売も、口コミで普及させたいと思っている。浄水装置も、石巻に納めて評判になり、来年度は農林省の仕事、福島県の復興事業の仕事で、「完全密封型の植物工場」と規模の大きい計画につながった。“口コミ”から生まれ、復興関係の仕事から声がかかり、少し社会に貢献出来そうだ。ブータンに納入した装置も、ロータリークラブ同士の口コミだった。台東区からも、2年遅れで大型RO装置の話も進んでいて、ベトナム最大の医療機器を扱う有力企業から話もある。

 輻射パネルの良さは、世間では案外知れ渡っていて、富裕層の方が主に使われている。導入には、工事費用を含めると、100〜200万円はする。庶民には高過ぎて買えないが、宣伝活動をしないで価格を抑えて、量が増えると安く売れると思う。

 私は週に2日、新浦安に住み、残りはつくばと、交互に働いている。つくばは、国の研究所に関係する“情報通”がいて、日頃から研究論議が出来て助かっている。逆に、新浦安ではマンションやオフィスの省エネ暖房の話に向いていて、既にマンション対応の輻射パネルも備え始めている。

 今後、無関心、無感動の人にどう伝えるかが鍵で、厳しい社会だが、進むのも地獄、退くも地獄と割り切って、猛進する選択で大型プラントの仕事を育て、苦労も厭わず、日常の充実を考えて行く。将来は、客が工場に足を運んで直接買い上げて貰える販売を目指し、地域と購買層に合った範囲で、究極は、自分が欲しい物をつくって販売するスタイルにしたい。企業の偽装ビジネスが横行し、大手崇拝していた人たちが不信感を持ちだして、小資本でも本物の会社に意識が向かっている。

 私はオリジナル性に富んだ製品を生み出し、来年の4月頃、当社の若手の女性担当者たちに、身近なスモールビジネスに特化したちいさな会社を任せたいと思っている。暖房という仕事は、古いけれど、今新しく見つめ直されるべき仕事で、大きく育てる段階に来ているので、チャンスを広げたい。

筆:川手恒義