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■ 治世の能臣、乱世の奸雄2013/06/26 (Wed)

 大型膜の装置を、北海道士別市のしずお農場のレストラン、八王子の老人ホーム、宮城県蔵王のミネラルウォーターを製造販売する会社に販売した。“ミネラルウォーター”は、腸菌テストに合格しないと、煮沸なしで使える認可は得られなかったが、見事に合格して納入出来た。

 しかし、膜は高価で、量を買わないと仕入れが難しかった。量を買うには大変な資金が必要で、円安の中だったが、今回仕入を決断した。早速、受注した製作中の超純水製造装置の前処理に採用したが、装置がシンプルになった。砂ろ過に代わる高度な装置として、在庫が出来、安心して販売出来る目処がたった。

 21日に、汚れた井戸水を濾過したい顧客の現場で、膜を使ったテスト機で水質検査を行った。結果、膜と樹脂を併用し色度の値は、1ランク上の純度だった。「膜は詰まる」と心配される人も多くいるが、今の製品性能は、昔と比較にならないほど良くなったと思う。砂ろ過はやがて“膜濾過”に代わると考えていち早く膜を使ったが、日本では未だ砂ろ過が主流で、ゴミと砂を取れたら十分だと考える客が大半で、贅沢と思われてか思ったより売れなかった。精密ろ過が見直されたのは、オール電化に伴うエコキュートの故障を避ける為に、水を軟水にする客が増えだし、膜へのニーズも高まった。当社でも、コストを安くすれば、一気に広まるマーケットになると思う。

 知人が会社から水耕栽培の市場調査を命じられ、見学に来た。新事業を企画する中、水耕栽培に興味を持たれた。当社のアクアポニクスが目新しかったのだと思うが、一番の興味は、安い価格だった。20年後には労働人口が1000万人近く減ると言われていて、皆、自社の将来を考え始めている。

 営業日誌やホームページを読まれて、見学に来る方が増えだした。私は長く仕事をしたいので「10年後に残る仕事か、数年で消える仕事か」を選別している。大型膜装置はその代表格で、水の仕事はブレイクすると思うし、水耕栽培も10年後に残る仕事だと思う。10年を待たずして、TPPの問題もあって農業は大きく変貌する。人手は劇的に減り、食料の確保も難しくなって、価格も高くなる筈だ。天候も荒れて、さらに大変になる。畑を耕す必要のない水耕栽培は、“お年寄りでも出来る健康の手段”にもなると思う。

 「地球上で生きられる人間の数は“50億人”」と言う学者もいるが、世界人口はやがて90億人に達すると推定されている。水も食料も、エネルギーも不足し、温暖化が更に進む。日本は加えて“老い”が急激に広まると同時にアルツハイマー症が深刻化し、社会保障どころか、食と資源の奪い合いが絶えない獰猛な社会になる。“間引き”ではないが、日本人口の自然減少は、理に適い、自然のなせる業と受け止めている。30年以内に起きると予想される大地震の恐怖より、“老い”が危機の中心になる社会が迫っている。

 6月18日、若手が総出で、台東区に納めた災害対策用浄水装置の保守点検に出掛けた。合計5台のメンテナンスで、スケジュールは詰まっていたが「いってきます」と元気に出て行った。仕事があるという幸せを感じることが、人間としての一つの分岐点になると思う。

 私は、39歳まで新日鉄で社員として働き、「貴方は宙に浮いた話をまとめて仕事にする」と煽てられて東京へ出た。“営業”の辞令を受け、周囲も驚く人事だった。社長から直々にスカウトされた社員だったので会う前は “ごますり男”と見られていたが、三菱、日商岩井、伊藤忠という名だたる商社の担当者が、破天荒な私が、何か変化を生む男と感じたのか、部署の営業成績は新記録で伸びた。新日鉄から来た社員が、農業用パイプの営業だったので、“新事業の前兆”と受け取られて盛り上った。ビジネスは、経営者で決まるし、新たな血を入れ替えると刺激になるとこの時に体感した。社内の盛り上がりを受けて“ガリヒ素”とあだ名をつけられた。ガリウムは不純物のヒ素を加えないと半導体の動作が起きない。「貴方は我が社にとっては不純物で天下りに似て好きにならない人も多くいるが、会社を盛り上げるヒ素になって欲しい」と言われた。この一年後につくばで、ガリヒ素のインゴットを開発する会社を設立し、アメリカにも進出して、その後46歳で独立した。自立して水の自販機を開発し、全国に普及させ、今に至っている。

 老人社会が迫り来る昨今、企業は生き残る為に“変化”を迫られる。変化に追い付けない会社は自然消滅する。多分三分の一はなくなると見て良い。当社も日々変化して、一日200トンを処理する大型装置もつくれるようになった。大型装置も、一人のプラントデザイナーが担当し、部品も仕入れて、省エネ省人員、低コストが整って、全てに強みが増して来た。変化こそ生き残る術だし、追い込まれて初めて知恵もでる。人口減も老人国家も、転換の機会ととらえている。

 新事務所に移り、家賃を50%削減して、庭に、有機液肥のプラントパワーの農園をつくり、一部“食”を自給する活動を始めている。ソーラーパネルも興味があって、太陽光発電で得たエネルギーを、冷暖房に使って電気離れの生活を進め、50%の節電を実現している。ソーラーエネルギーで、地下水を濾過し、ヒートポンプを動かす技術も一部実用化し完成に近い。太陽光発電関連も、何れは個人でつくる時代が来る。もっと安くなって生活に溶け込むと思う。

 つくばに住む自衛隊勤務の方が見えて、自分で浄水器をつくりたいと言って来た。大阪からも膜のフイルターだけを買いたいと言う話もある。装置メーカーとして、部品を単品で売ることはないが、自分でメンテナンス出来る人には売ってあげたい。これからは厳しい社会になるので、買えない客も増えるので簡略な膜装置にする。

 大手企業でリストラにあい、社員の父親が相談に見えた。転職か自立か迷っていた。社会でも今、自立かアルバイトか迷う人が増えてだしてこの動きは更に加速する。私は自立を進め、「剪定」の仕事を推奨した。剪定も高齢化が進んでいて早晩に職人が不足する。植物は毎年必ず成長して伸びる。草を刈り取る仕事は絶えないし、技術が身につけば、造園の仕事もある。これからは安い剪定で十分というマーケットも広がるので、身軽に快く仕事をすればと勧めた。

 私自身は、46歳で独立したが、失業しても全く“再就職”は考えなかった。赤坂見附に部屋を借り、机と小さなソファーを置いて、無料で相談に乗る仕事を始めた。愚痴を聞く程度の相談が広まって、仕事の占い師と言われ、コンサルタントのような仕事にまでなった。前職の経験が生きて、味の素、富士レビオ、日本鋼管からも応援したいと数千万円の仕事も頂いて、密かに三菱商事、新日鉄も裏で助けてくれた。日本のレアメタルの第一人者中村さんや、ヘッドハンティングの上野里香さん、アントニオ猪木さんともこの小さな部屋で出会った。会社務めは、辞めてしまえば培ったキャリアは大抵消えてしまうが、一人で得たキャリアは確実に財産になる。

 ハワイで「アールエイチプリンスビラ」を設立した。現地のプリンスビルの名を頂いて、有機農法を広めてほしいと、オランダ製の液肥を紹介され、その実力に惚れ込んで、独占権を買い、そのことで水や農業も関心がつながっていった。独立は趣味と欲望が混じりあった日々で、勤め人には味会えない高リスク社会で猛烈に流されて何とか生き抜いて来た。即就職するのは、一見安全そうだが、未来につながらない。

 つくばの研究所の関係者から、1000種類の芋から選んで品種改良された「すいおう」というサツマイモを貰った。この茎葉が、抗酸化力に優れ、「若さに有効」とされている芋で、100%無農薬の畑をつくれば、この仕事もテーマになる。つくばで、若返りに効く菌を使ったヨーグルトが開発されて8月から販売される。すいおうの茎葉を加えると面白い。独自にサプリメントが出来ると更に重宝される。植木の剪定を覚えれば、プラントパワーを使った菜園や、水耕栽培の経験も積めて、アドバイザーにもなれる。仕事は案外偶然出あうもので計算外から生まれる。

 先の見えない社会情勢だが、アベノミクスから社会が激変した。多分、物価は1%も上がらないと思う。副作用が出ても、零細企業は死んだふりをして、強かに生きると思う。日本に魅力が無くなり、アメリカも韓国も中国にすり寄って日本は孤立無援国になるだろう。チャンスはむしろ、日本の衰退の中にあって政府や、大手企業、農協、医師会などの利益団体が弱わって、新たな競争が起き、若い経営者が台頭するはずだ。日本に魅力がなくなると、投資家も去り、マネーゲームも収まって、若い国民は自立心が芽生えて、今より “希望の未来”が見えると確信している。

 「治世の能臣、乱世の奸雄」この諺のごとく、国や社会が荒れれば荒れるほど、不安が深いほど、若さに満ちた野心を持てば生き残れる。弾けた声で厳しいメンテナンスの仕事の出かける姿を見て若さの凄さと勤勉さが輝いていた。

筆:川手恒義