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■ プラントパワーを使って水耕栽培2013/04/09 (Tue)

 つくばの研究者が、室内環境の改善としてウイルス殺菌の為、有機液肥「プラントパワー」を使いたい旨の申し出があって提供した。これがきっかけで、品種改良されたサツマイモの一種“すいおう”が届いた。蔓と茎に栄養価が豊富で、血糖値の上昇を抑制する効果があると言う。先方は路地栽培で、当社は水耕栽培で育て、お互いに情報交換して、“健康食”として広げようと託された。水耕栽培でサツマイモを育てた実積を調べたが、一例ある程度だった。前々からプラントパワーを活かした水耕栽培をしたくて準備を重ねてきて、福島にある農業ハウスを販売する会社から新種のニンニクを育てないかと勧められたが、臭いが強くて迷っていたので、今回の“すいおう”を試すことにした。

 水耕栽培を調べだすと、中国をはじめ欧米では、魚の養殖水を利用した“完全循環型水耕栽培”、通称「アクアポニクス」が、インキュベーションなどの手法で大規模に展開されている。大分の友人も、オランダの技術を導入して、大規模な水耕栽培施設でパプリカを育てる事業を始めたが、大きな資金が必要で、我々には手が届かなかった。私は、液肥を使わず、直に養殖水を循環させる「アクアポニクス」の栽培法に興味が沸いた。つくばでは、20年以上前から「チョウザメ養殖」に取り組み、世界で初めて孵化を成功させた実積がある。

 最近では、NHKの「キッチンが走る!」という番組に、つくば市国松の養殖場が選ばれて収録されたりしていて、宮崎県や仙台市、海外では、台湾・マレーシア・フィリピンへと広がっている。しかし、養殖は魚が成長するまで時間がかかるビジネスで、経営実態は厳しい。魚の養殖と水耕栽培を組み合わせる農法を、この養殖場でも取り入れていて、見ると装置は当社でも作れるし、高級魚のチョウザメの生体も学べるので魅力的に思えた。欧米や中国においては、このシステムを開発する企業も増え、大学まであるが、日本国内での実例は少なく、個人規模の範囲でしかない。そのほとんどが淡水魚でチョウザメの養殖は多分、初のケースだと思う。養殖と水耕栽培を両立させる「アクアポニクス」で採算にあうシステムをつくる目的で合意した。“球体タンク”で魚を養殖し、養分の高い水を汲み上げて、配管に流しこむ循環式の装置を開発し始めた。

 当社は水の浄水と同じく、20年前から有機液肥を、オランダとドイツにある会社と提携して、有機農法の普及を図って来た。“循環型エコ農業”を考えると、アクアポニクスに行き着く。個人でも取り組めるインキュベーション装置をつくって普及させると養殖も仕事になる。情報の発信基地つくばになればと思っている。
「海苔」の養殖は、河川から流れてくる養分で育てる。海苔養殖がなければ、養分が余って、海の生態系が変化する恐れがあると言う。養殖魚の排泄物も、高濃度のアンモニアと窒素、リンが豊富に出て、過剰になると魚にとっては毒になるが、循環方式の濾過では、その水が液肥に代わり、循環水として使える。バクテリアが好む弱アルカリ性にして、植物にはプラントパワーを表面散布し、銅、マグネシウム、亜鉛の微量金属を含む酵素液肥を根まで届ける。

 また、養殖に必要な酸素は、マイクロバブルの技術と酸素発生器、水温をコントロールする為にはソーラー温水器など、知り得る技術を集めると、ビジネスに為りえる。採算性を考えると、育てるのは、商品価値の高いチョウザメが一番だ。つくばでは、幼魚の仕入れから養殖技術まで学べる環境があるので、最適だと思う。
家庭用の小型アクアポニクスは、当社でつくってレンタルして、同好会仲間を増やすことで、ハイテク・アクアポニクスが、趣味から仕事に発展する緩やかな形を考えている。野菜を収穫して、魚の成長も楽しめる、「自給生活」が一部体験出来るだけで、心が休まる時間が送れると期待している。

 安倍首相の経済対策が、今のところ円安・株高になり、盛り上がりだした。円安は105円まで進むだろう。輸出企業に“恩恵”が出て、経済全てに恩恵が出るかのようだが、副作用も大きいと思う。戦中の“大本営発表”に似て、報道自体も揺れて、信用性がない。泣くのは常に庶民で、世論に揺れるより覚悟が求められる。2年以内に2%物価を上げて、デフレを脱すると言われても無理だ。論より証拠で、やって貰うしかない。一方、今の日本人には、荒治療も必要で、今回の日銀の処置は日本人離れした判断で驚いているが、何もしないで理屈をこねるより、一度死ぬ気でやって欲しい。

 日本の食べ物の多くは、中国に依存した輸入品だ。大気汚染、河川の汚染、鳥インフルエンザと、連日の報道を見てまともな感覚では中国の食材は食べたくはない。自分でつくりたい人も増えて、現に、家庭菜園の人口は農業従事者を上回っている。意識は食からエネルギーにも広がって、電気も自分で使う半分ぐらいは自分で生み出して管理したい人も増えている。

 水を本業にする者として、福島原発での放射能汚染水の漏れ事故が気になる。何か意図があるのか、単なる事故で漏れたのか、真意は不明だが、この影響は図り知れないほど深刻だと思う。日本には水の技術は全く無いと思った方が正しく、汚染水処理は絶望的だと思う。不幸な出来事に会うと、多くは、人を自覚させ自立を促すが、この放射能の汚染問題は国を揺るがす危機を含んでいる。

 仕事で寄った石巻港の食堂で食べた魚は、新鮮で美味しかった。真新しい建物も出来つつあったが、肝心の人影は少なかった。復興は早くても5年以上はかかると言われているが、働き手は減り、漁業自体が衰退するともっとかかる可能性がある。人口が減って、漁をする人も、畑を耕す人もいなくなるので、魚は養殖に、野菜は工場生産になると思う。2%の物価を上げる成長策も、金融策頼りでは、生産者も消費者もいなくなって、見せかけだけの付け焼刃では、庶民は生き残れない。

 東京でも、10年後には65歳以上の人口が増えて、土地や空き家の増加が深刻な問題になる。そのような場所で養殖が出来ないか、素人でも水耕栽培が出来ないかと祈る気持ちで取り組んでいる。「アクアポニクス」は高齢者の就労と健康の手助けにならないか、インキュベーションの真似事を私が体験して、やがてはビジネスに繋がっていくと嬉しい。

 養殖と水耕栽培は「大儲けする仕事」ではない。真剣に考えると笑われそうだが、私は食を守る価値がある仕事として大真面目に考えている。“食や水”は生活に欠かせないし、努力次第で自らの手でつくれるという実感を技術にしたい。福島では汚染水が漏れ、沖縄では海が埋め立てられて基地が出来る。魚場も農業も人も衰退すれば、例え、投機マネーで勝ち組が潤っても、稼いだ金で中国の汚い環境で育った食べ物を口にし、放射能を、東電に丸投げにする生き方はしたくない。

 平和ボケと市場万能性が日本を脅迫している。隣の中国からは尖閣で恫喝され、空気、河川を汚して、今回はウイルスだ。私は汚い国は嫌いだし、放射能で海を汚す、他国に迷惑をかける国にもなりたくない。
日本には、大災害も来ると言うし、地震は日本にとって大きな危機だ。浄水装置を台東区の公園内や学校に納入し、今回も52項目の水質検査に適合する最新の設備を納めた。大型のRO装置2基を納める話もある。石巻の食品会社や、日立市からも話がある。最近は少しでも社会に役立つ仕事も増えて誇りに思っている。

筆・川手恒義