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◆ 象と蟻2004/05/21 (Fri)

5月16日から21日まで韓国訪問。
目的は大型中空糸膜の共同開発の進捗状況のチェックと大型パイウォーターフィルタの開発。30万円台で販売できる電気分解方式による水素水の製造が可能な自動販売機の開発状況と今後の検討課題を把握する目的があった。
この機種は大型の中空膜と磁気水を製造できる機能に加え、電気分解の技術を利用した今流行の活性酸素に有効な水素水を製造できる機能を有している。おそらく、これほどの高性能、破格のコストであり、販売が実現出来てうれしい。

もうひとつの目的として、東京大学の教授が私を韓国の売上高1兆円企業の大成グループの会長に超純水装置の技術提携を世間話で薦めた。話が少しずつ水面下で進み、今回訪問の折に先方の会社から正式なオファーがあった。
私の会社は超零細企業で、趣味と実益を兼ねて研究や技術開発を中心に大手ではできない職人的な会社経営してきた。
インターネットのホームーページ以外、全く本格的に営業や宣伝をしないで超純水装置や大型UF膜、電気分解による殺菌液の開発、海外のパートナーと技術交流を進めて積み上げてきた会社で企業の経済的な力は全くないといえる。大企業との取引においても、ほとんど前金かその月の検収と同時に集金を完了するといった厳しい条件下で営業を続けている。
また今回、韓国に行ってうれしい報告を受けた。韓国に現在3基の超純水装置を納入しているが、全て順調に稼動しているとの報告であった。他の超純水装置のEDIはトラブルが多く、EDI装置の評判は良くなかったが、当社の方は好評で大型の超純水装置・時間5トンの新たな注文を受けた。
話は戻るが、超大手の大成グループの会長と懇談が始まった瞬間に、お互いに何か表現できない意思疎通の電流が走ったような感じがして、とんとん拍子で世間話が進んだ。
一般的には金持ちの会社といっても日本の比ではなく、石油をはじめガス等のエネルギー産業の超大手を一代で築いた人物らしく非常に魅力的な人物であり、話をするだけで良い経験になると思った。そして意気投合し、まさか提携の話まで話が及ぶとは思わなかった。
私は新日鉄や日新製鋼に勤めていたサラリーマン時代の経験では、新規事業と技術開発、海外の企業と提携や技術交流の交渉を専門に担当していたので、この種の提携交渉においては自然な形で当社の意見を述べることができた。
企業規模から見れば、象と蟻との差があることは歴然である。
しかし、象が何時も勝って常に蟻が負けるとは限らない。特に新規事業のビジネスにおいては圧倒的に小企業の我々の方が100パーセント有利である。ただ韓国の大成グループの会社運営のすごさを感じた。それは全ての権限が会長にあって、瞬間で方針が決まってしまう。私も瞬間で物事の判断が決められる立場にあるので、会長対私との抽象的な話が多く、それを具体化するために事務当局と各論に論点が及ぶと問題が析出してなかなか前に進まなかった。
私が開発した数々の機械全てを大成グループが買い上げたいと申し出てきた。実用段階の装置から開発段階の装置全てを購入するという交渉は難航した。相手は安く買いたいし、我々は少しでも高く売りたい。
企業間同士の提携関係において、売り買いが介在すること自体面白くないので、その話をやめ、新たな提案を大成グループに申し出た。
大胆な提案で約4トンのROプラスEDI、前処理には大型UF膜の自動再生装置を備えた最新鋭の超純水装置を無償で提供する。そのかわり、ソウルの大成の本社に実稼動が可能なショールームを新設する。
蟻の会社が数千万の装置を無償でレンタルすること自体、蟻の力が象を一撃で倒せるインパクトが交渉の席上で生じて、大成側からその見返りとして私が6月に設立するNPO法人の方に一定の金額で寄付をする大胆なバーター契約が双方とも納得した形で交渉が成立した。私としては中国から純水装置の問い合わせがあるが、日本でプロトタイプを造り、それを量産する上で、最適な国がお隣の韓国だと思っている。驚くことに我々がアイデアを出すと、1ヶ月そこそこでほとんどの会社が試作品を造る。
30年位前の日本の製造業の姿を思い出す。韓国でも5年程前はすぐに100セット200セットの注文であれば、生産するといった大量生産方式が定着していたが、今は小ロットでも将来成長するためには積極的に投資をするという若い経営者が続々と生まれている。今回我々が大型のROを委託する会社を訪れたが、屋根もない野っぱらの工場で若い労働者がいきいきと働いていて、プレハブの事務所で堂々と商売をしている姿を見て逞しく感じた。日本は将来足元をすくわれるような感じがした。私もつくばで小さなショールームと実際に超純水装置を動かしデータ取りをしているミニ工場を有しているが、なんら恥じることなくお互いにがんばっている姿を見て、心強く感じた。
 アメリカでデザインをして、韓国に送り、日本の技術者が彼らと共に組み立てて世界中に販売できる基礎的な計画と製造準備が完了した。
 6月に中国から私たちの製品を中国全土に売りたいというこれも若い会社が当社を訪れる予定になっているが、万全な生産体制が整ったので心強い訪韓であった。
 8月末に韓国で我々が造る超純水装置のお披露目会を韓国の財界の人たちをできるだけ多く大成グループが招待し、私もつくばを中心にした地元の経済人を韓国に同行してお互いに日韓で新しいビジネスの創設ができる交流会を計画したいと思っている。この計画をアインファーマシーの会長に電話で話したところ、快諾して喜んでいただいた。韓国に進出したい希望もあるので交流会には参加したいと申し出があった。
 たぶん6月末に認定されるNPO法人水屋安全な水を考える会の設立を記念して全国的に当社の組織拡充を図り、続々と新製品を投入したいと思っている。