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■ 第一弾、若手の調査報告2012/01/23 (Mon)

 インドへ出張していた二名が、17日に帰国した。その間に送られてくる情報から、当社と、インドのプロジェクトチーム、双方の考え方と、取り扱う装置のコストの算出についての考え方の差が問題になった。

 ここ10年、アメリカや中国とビジネスを進めて来たが、アメリカは残念ながら水技術の影響力は衰退して、今は中国にその座を奪われている。その中国も急激な発展を見て、人件費が高騰して、装置の価格も上がり厳しくなって来た。そこで、発展するインドに関心があって、安い装置部品があると見て調査を始めた。インドは、日本人の体質的に合う感じがして、強かさがある中にも、親しみが沸いてきた。私自身、昨年の3月に知人の勧めもあってインドの企業家集団と情報交換を兼ねてインドのムンバイを訪れた。

 私の一番の目的は、病院全般の調査だった。次に若手が現地で働けるか、日本と比べてコスト差がどれほどあるのかを知りたかった。日本は、日々停滞感が増して特に若手には希望が持てない国になっているので、ぜひ海外に拠点をつくりたいと考えた。当社が扱う装置を見てもらえばわかるように、家庭用にしても桁外れに大きくて、性能が高い。つまり、地下水に対応するので、使用する部品も全て産業用で、しかも最先端の部品で構成している。海外での劣悪な水環境下でも十分能力を発揮できる装置を製作している。日本の水、特に水道水は、24時間管理されて安全な水だ。海外では、富裕層は十分にお金があるので、潤沢な水が買えて集まるが、結局はその水を消化しきれなくて、捨てることになる。このことが国全体の水不足を日常化させている。

 「インドに進出して採算が合うのか」この点を知りたかった。私はインドで工場を建て、一社で生産する力はない。しかし、先端の装置を扱っているので、その装置の技術を生かして現地の人と提携すれば、新しい仕事が出来ると考えて、昨年3月にインドを訪れ、家賃、日常生活、移動の費用を聞いて見た。インドのビジネスパートナーは、夫婦で別々に運転手を雇って2人で月額3万円だという。住居の費用も月3〜4万円で借りれると聞いた。一般的なインド人の月収は、8000〜15000円ほどで、職人などの給与は3万円くらいということだった。これが本当なら、つくばの事務所をインドに移す方が採算に合う。つまり、日常生活にまつわる金額が即コストになるので、どのくらい安いのか確かめたかった。

 提携や、技術供与の話、インドでの販売量、メリットがあるという話は広がるが、日本人を派遣して、コストに合うのかを知りたかった。いくら調べても正確な数字はつかめないし、数字をつかんだところで、投資を左右する答えにはならないので、とりあえず、女性社員二名を現地に派遣した。語学は堪能ではないが、勉強になったと張り切って帰って来た。日頃から訓練は十分だったので、調査力は合格だった。
 
 世間では、この不況の中2週間も海外に行かせ、贅沢だと思う方もおられるが、零細企業にとっては、社員が宝で、実力の底あげが、企業力になる。零細企業は、高給で優秀な人材を集めても採算に合わない。大手企業は、下請けを使って莫大な利益を得るために、大金を払っても優秀な人材を集めるが、中小零細は、自社の人材を育てるしかない。英語の素養があれば、とにかく実践訓練、調整能力にたけた者には、相手国の心理や感情を学ばせる。私は、何よりコミュニケーションが重要で、経験力や理解力が、流暢に会話することよりも価値がある。

 インドのコストと、日本の製造コストを、単順に比較は出来ないが、少し住ませてみて、比較してみた。企業の将来を考えて、日本に拠点を置きながら“海外に進出してメリットがあるのか”を知りたくて調査した。
滞在については、女性が現地のアパートを借りて生活をするには、危険度が高いと言うので、ホテルを選んだ。移動には運転手を付けた。月額15000円と言われていたが、現実は一日3000円+αの費用がかかった。こうなると、最低でも、移動費が月に10万円かかる。日本では毎日タクシーは使わないし、車を購入してローンや税金を払ったとしても、月10万円にはならない。思った以上に高かった。

 住む場所も、民間の家に泊まらせてもらって、食事を含め一日5000円になる。日本人は甘いのでぼられているのか、日本とのコスト差はなかった。ホテル代を一日7000円として、約20万円のコストはかかる。食費を加えると5万円くらい、それに渡航費と給料を加えるとざっと一人安くて50万円の費用がかかる。毎月この費用をインドに投下して、ビジネスを作り上げるためには、日本とインドが互いに協力して、経費の分担を考えないと仕事は難しい。例えば、日本人の月給が20万円として、インド人の給与が1万円だったとしても、約20分の1の生活水準の差はあるはずだが、滞在費用を比較すると、日本と同等で非常に高い。この生の数字がつかめた意味は大きかった。 

 この二名は、インドでの日常生活のコストの調査を任せたが、提携の相手は、言葉も話せないのに、営業の相手先を紹介して回ってくれた。この行動も、情報収集にはすごくメリットがあった。出発前にアイフォンをそれぞれに持たせて、何かあった時は、瞬時に通話が出来る体制を組み、言葉が通じないときは、英語でライティングしてもらい、それを撮影し写真を共有出来たので相手の意図を瞬時に探れたので、言葉の障害はそれほど大きな壁ではなかった。むしろ、会話が出来なかったために、より相手の心情を見抜けたようだし、物事の状態を正確に掴めた意味のある2週間だった。次に、少し技術の分かる男性社員を引き続きインドに派遣し、更に調査を重ねている。今度は1ヶ月派遣して、インドで投資をする価値があるのかを調べている。

 見知らぬインド企業と日本の零細企業が提携するのは、非常に難しい。その理由は、双方に資金も少ないのに欲は大手企業並み深いからだ。つまり双方に魅力の引き出しが少ないし、技術力も、人材も、脆弱だ。当社は小さな企業だが、扱っている装置の規模は大企業を陵駕する水準にある。超精密膜技術を、日常扱っていて、膜技術のすべてを扱える。RO設備も淡水化の設備を含めて、超純水の製造技術もある。排水においては、MBRも習得し、バイオマスの技術も少しある。残念ながら日本の市場はどんどん縮小して、若手にとっての日本の未来は、墓場でしかない。しかし、戦後培われてきた日本人の特性は、世界に冠たるものがあって、この良さを生かしたい。会社の規模とはかけ離れたテーマを仕事の糧に選んできたのは海外展開を考えてのことだ。

 今回、インドに提携する条件として、RO+EDIの超純水プロセスを提案した。彼らはEDIに関しての知識は全くなかったが、実はインドでも超大手企業では、発電所のボイラー用などには既に使われている。EDIが普及すると、イオン交換樹脂の再生ビジネスに影響が出るので、水処理メーカーはEDIを使いたくないのが本音だ。イオン交換樹脂は、一週間ほどで再生しないと純度が出なくなるので、再生する必要がある。再生の度にお金が稼げるドル箱ビジネスなので、EDI装置を導入すると、1〜2年間はイオン交換樹脂の再生をしなくても使えるユーザー側にメリットはあっても、樹脂メーカー側からしたら儲からない装置として知られている。

 日本でも、EDIのプロセスは時間1トン当たりの装置だと1000万円を超える。価格は独占的な支配価格で根拠はあいまいだ。私の狙いはインドで製造させて、日本に持ち帰れば、その半値のコストで販売が出来る。販売量を限定すれば、価格にはさほどの影響はないし、発展途上のベトナムやタイやインドネシアに向けて、インドからの供給を考える。大型のUF膜と、MBRも有望だ。彼らがほしい濾過技術だ。あとはコストの算出で、日本人が滞在する費用が高ければ日本で教育すれば安く済むしEDIのコストも抑えらる。日本でプロットタイプを製作して、それをインドに送りコピー生産をさせる形も考えられて技術援助ビジネスも有望だ。インドが発達しれば、ロイヤリティーが発生するような仕事になれば成功だと思っている。ビジネスでの国際感覚は一面、“食うか食われるか”の体験から生まれる。試してみる意味はあると思う。

 世界中、水ビジネスは注目されているが、現地で仕事をする、予想以上の資金がかかることが分かった。私はRO+EDIと排水のダイレクト膜を選んだのもこの技術は簡単には習得できないテーマで、習得には、数年の時間が必要になる。EDIの技術は今後の期待の装置で時間300gの装置を標準に技術供与を、無償で行うことを決めている。インド側からこの見返えりに何を提示してくるのかを見たい。インドでは浄水より排水の仕事の方が有望な気がする。ダイレクト膜も有望な技術として販売が拡大すれば、日本での販売も安くなるので、当社も期待はしている。EDIを彼らは、製薬会社にEDI装置を設置したいと提案してきたが、排水会社の方がいいのか、別にショールームの形で展示をした方がいいのか、それらの調査を終えてから決める。

 欧州の危機、イランとアメリカがこじれる危機が心配になる。原油が高止まると、電気代にもはね返ってくる。既に企業も17%値上げが決まり、次に家庭に波及し、その結果、水道代にも及ぶ。消費税を数%上げると大騒ぎしているが、電気、ガス、水道代が値上がりする方がもっと怖い。

 日本は不況慣れして、案外打たれ強いと思われて、円に資金が集まっている。私の周辺でも海外を意識した動きが激しくなっている。昨年の年末にはベトナムから医療関係の会社の代表が見えた。話を聞くと当社の水技術に強い関心を持たれていた。不況になればなるほど水ビジネスに関心が集まるが水の仕事は幅広いので選別が難しい。インドは日本から遠い国で馴染みの薄い国だが、最近はインドにビジネスチャンスを求める動きが増える。インドのビジネスはインド人でも難しいと言われているが、今年は前向きに考えて、忙しい年にしたいと願っている。