戻る
◆ 中国ビジネスに一歩前進2011/08/16 (Tue)

 インドで仮契約までして帰国直後、3.11の大災害が起きた。インドから提携先の要人が来日する話が進んでいたが、放射能の影響で商談は延期になった。日本人に比べて、外国人は放射能に対しては敏感だ。今回の原発事故が、広島に投下された原子爆弾の30発分にも及ぶ被爆量にも関わらず、放射能の影響を人事のように感じているのが実情だ。“風評被害”が嘆かれているが、うわさで騒ぎが収まる感覚で済まされている。インド側から訪問を延期したい旨の連絡を受けた時は、大げさではないかと思ったが、静岡の下水汚泥にも汚染物質が検出されるなどして、日本政府がデータをひた隠しにしているのを感じると、事実の深刻さを痛感する。

 インドを相手に仕事をするには、考え方とのギャップを理解し、スケールの大きなマーケットに慣れることが鍵になる。日本ではその鍵は見当らないので、中国を訪れた。中国とインドは、表向き関係が悪いと思うが、中国は、インドとアフリカが最大の市場で、私がインドと仕事すると知ると、一緒にやりたいと何度も頼まれた。中国の西安には、産総研のベンチャー企業がある。私の中国間貿易の窓口をお願いしているが、大型膜を特別に販売してくれている背景は、大きな市場を考えての布石だと思う。

 原発事故以降、石油価格が高騰して石炭が注目されだした。中国の石炭採掘現場では、数千人もの労働者が地下で働いているが、チリの落盤事故があって、飲料水供給が問題になっている。現場の地下水は、墨汁のように濁っていて、分離して飲料水にするには、高度な膜ろ過装置しかなく、産総研のベンチャー企業を通して、開発を頼まれた。

 RO水と軟水を混ぜて使用する浄水器の開発を急遽決定し、ムトウFA社と共同で部品代400万円を出資して部材を集めた。技術的には大した開発案件ではなかったが、中国もインドもまだまだ貧しく、価格が安くないと売れない。安くする為の部品調達に苦戦した。発注を間違うとコストに跳ね返るし、品質の問題も重なって難航した。部品を安く買うには、コンテナ単位で輸入しないと採算に合わない。今回の装置には、400〜500gpdの大型RO膜を採用した。大勢の人間に飲料水として供給するには、これくらいないと話にならない。この大きさのRO膜は開発された直後で、ポンプとの相性も確認されていなかった。ポンプも一台100Wの大容量で、強い磁力があって空輸の許可が下りず、通関する為のコストも膨らんだ。部品から完成後のデザインまで、山場を乗り越えてやっとの思いで2機種を西安に送った。この後も中国は一筋縄ではいかない国で、浄水器を日本から輸入するには多くの規制があり、輸出には甘く、輸入には厳しいという中国らしさが前面に出ていた。現場でも許可申請を始め、水質の合格証書等の提出を求められ、テストの実施すら危うかった。私にすれば、依頼された仕事を日中友好の心で輸出した迄のことで、中国国内の問題は中国人で解決するよう指示して、腹が立ちながらも半ば諦めていた。

 8月12日、産総研の担当者から弾んだ声で「浄水器のテストが大成功したと中国から連絡があった」と電話があった。“3.11”として、メモリアル装置を開発し、ホームページに掲載しているが、中身は大型限外ろ過膜、イオン交換樹脂、活性炭を前処理に装備し、400gpdのRO膜を4本組み込んだ贅沢な装置を提供したので、成功するのは当たり前の結果だった。4リットル近い純水と時間2トンの軟水が出来る装置を日本で購入すると、軽く100万円は越える。リアカーに載せて運べるコンパクトタイプで、デザインも工夫して、世界に売れる品質と価格を実現させた。10台単位で作ればもっと安くなると思う。

 中国、インドの水道水の硬度は800〜1000もある場所もあって、飲めないが、この装置を通すと硬度800が50に下がったと報告を受けた。中国やインド、アジアに向けて販売するには、高硬度や砒素にも対応出来る能力がないと使えない。私がくどいほどにイオンレベルの汚れを説明しても理解されなかったが、一目瞭然、実際にこの装置を通した水を飲むと、驚きの声が上がったらしい。また、彼等も私が中国側の手際の悪さや、不備で怒り心頭しているのを感じていたのか、努力をしたようだ。現地の粘り腰で、延々600キロの距離を車で移動してテストを重ねたと報告があった。この西安の社長は、開発に関する打ち合わせを終えた帰り際の空港のロビーで、強く握手し、技術の供与を懇願した。我々のような零細企業が世界で仕事をするには、技術力を証明しないと相手にはされない。誠実さ、やさしさ、真面目さも日本では重要だが、技術力がなければ中国のパワーには勝てない。インドのビジネスは、中国よりも物価が安く過酷なので、中国で成功し、部品メーカーを見方に出来ないとインドにはつながらない。

 急いで開発したものの、中国人の貪欲さは凄まじい。彼等は、儲かる行動しかせず、頼むだけで、開発費は勿論、技術者の派遣費用も一切出さなかった。中国に売りたければ、そちらがお金を出せと言う横柄さは終始不変だった。この暗黙のルールで、中国でビジネスを始めて泣いた会社を多く見て来た。全ての資金がこちら持ちの大損で、下請けのような感じがして、心のダメージの方が大きかったが、この開発で新しい装置が完成し、収穫があったことも事実だ。部品も40台ほど残っているし、中国での製造拠点も出来そうで、単純だが、私の怒りは収まった。西安のスタッフも、中国の汚い水が飲めることを体感して自信が生まれたようで、色々な方面にPRしたりと、少し先が見え始めた。日本人が絡んだ、「安心の浄水器」として西安では小さな波紋が広がり、評判になり始めたと聞いた。上海万博で、中国で初めて水道水が安心して飲めると世界に報道された。私が採用した膜も、この会場で使用された膜メーカーの物で、性能は世界一だと思う。炭鉱からも新たに約時間6トン処理装置の注文も来ているが、商談を受けるか否かはお金しだいで中国人の生き方を見習って、お金に執着する川手に変身してみる。中国は今、急速に物価が上昇し、装置の価格も高くなっている。このまま、インフレが進めば、数年後は輸出相手国として有望な国になる。西安のビジネスを育てる意味もここある。この装置は更に改良し量産すれば十分売れる価格になる。山梨県の上野原の食品会社、つくば市の薬局、石岡の防災用に問い合わせがあるが、一番熱心な上野原の会社からテスト納入を始めたい。

 日本でも、震災で地下水の水脈が乱れて、水が濁って使えない相談が増えているが、我がホームクリーンの装置を導入した家は、全く影響を受けずきれいな水で生活出来たと連絡があった。このタフさが一番の能力だと思っている。

 中国を始めインド、アジア地区には、ソーラーパネルで点灯する街路灯が列挙している。この仕事が伸びそうだと、2年前にLED街灯を購入し、水野が工場に立てた。電力事情が厳しくなると、照明の仕事も有望だと思っていた。近所の方に明るいと喜ばれて、製品化を望む動きが仲間から起き、ソーラーパネルを使ったLEDの小さな“発電事業”を育てたいと興味が沸いている。我々は、吹けば飛ぶような小さな会社で、仕事が無ければフリーターと同じだ。厳しい毎日を生乗り切っているので、仕事を選ぶのも我々の特権で、好きな仕事を選び、自由に生きたいと思っている。

 世界中の国でお金が無くなり、深刻な経済問題を抱えている。特に先進国が停滞し、事実上破綻に向かっている。グローバル経済は金が金を生む“マジック経済”で、中身がないのでやがて財政が破綻する。偽りの成長を繰り返しても、泥沼を這い回るようで悲惨だ。まさに乱世で、葛藤の時代でもある。勝者なき消耗戦の様相で、新しい分野の仕事も底が浅く、誰にでもチャンスがある。不景気は、生き残る意思が強いとチャンスは多い。

 2年前にはソーラーパネルに参入し、米国の鉛蓄電池を扱う会社と、提携する話があった。その会社から「家庭用蓄電池」のカタログが送付されて来て、2.7kW蓄電出来るタイプで、売り値が約73万円の連絡があった。東電が事実上企業力を失い、小規模発電、蓄電池等の商品が登場し出した。東電が力を持っていた時代は、東電に逆らう開発はタブーだったが、巨大企業が倒れる寸前になると、新しい動きが目立つ。日本人は重しが取れると、社会は活性化し、躍動する。開発の芽も規制を緩和すれば生まれて来る。

 LED照明を継続して調べていると、渡辺氏の紹介で、今回、立命館大学の教授が開発した小型発電機を見学しに出かけた。少しお金のある会社から、投資を受けることが出来れば、いいところまで行ける技術の片鱗を見た。大学での研究は、大方金喰い虫で、成果が民間に流通するような成功話は聞いた事がない。スケールも小さく、ほとんどが研究の枠に閉じ困っているが、この教授は何かを秘めていて、無駄を承知で出かけたが、アイディアも浮かんで良かった。

 東京の代理店の渡辺氏から「工作機のメーカーがソーラーパネルの事業に進出し、15億円のマーケットがあるが、パネルを貼る業者が足りないので、紹介して欲しい」と相談があった。武藤氏に紹介も考えているが、下請けの仕事は労務賃の仕事で採算に限界がある。この手の仕事では慎重に話を聞かないと決められないと思っている。

 LEDの照明器具を2機種仕入れて、今週到着する予定だ。中国のLEDの品質の悪さを指摘する人も多い。しかし、LEDの価格は安くなる一方だし、コストを考えると中国抜きには考えられない。中国は今も成長していて先入観を捨てないと実態が掴めない。LEDの進歩は、北京オリンピックでLED照明が大量に採用されて大幅に伸びた。次回は、上位機種の1ランク下の商品を買って、性能を確かめたい。

 欧米の株が暴落し、ドルもユーロも安くなくなり、欧米の製品にも手が届きそうだ。照明メーカー「フィリップス」からLEDのチップを仕入れ、自社製で組み立てる方式も考えてもいる。単位は1万個から購入する必要があり、相手もまさか1万個は買えまいと軽く見ているようだが、案外買える予感もしている。

 今、世界中の企業の成長が止まり、近い将来、円が60円台に突入する時代が来る。76円代で超円高と騒いでいるが、欧州の混乱は、根が深く経済の回復は遅れる。フランスもイギリスも、ガダフィー大佐と同じで、国内の問題を隠す狙いで戦争に手を汚し始めている。この動きが飛び火し崩壊が始まると見ている。

 円高が続くと、水とLEDの仕事は有利で、多少の無理をしてもこのチャンスを生かしたい。パートナー関係にある大分の会社の友人は、大規模な街灯照明の仕事を始めているが、私は、小規模の資金で参入出来るLED照明を考えている。暗い夜道を明るくする程度の仕事だし、10〜60Wの範囲で製品化を考えていて、とにかく安くしたい。日本人は、円高に慣れた経済を育てないと、今後は更に苦しくなる。経済も更に停滞するが、水と明かりは必然の分野で、10インチの膜装置を考えている。節電ムードも拡がっているが、節約では何も生まれない。隣の中国も躍進著しいが、内情は苦しくなっている。中国は年間10%近い経済成長を成し遂げGDPで日本を抜いたが目新しいものがない。私も中国の躍進の流れに乗り、事業を拡大して来たが、今後は仕事を絞って小型の発電機、蓄電池、LED照明の仕事を頑張ろうと思っている。

 原発の事故から4ヶ月経った今も、放射能の影響が様々な業界を直撃して先の動きが見えない状態で、肉牛農家を始め、鳥、豚、魚、野菜と切りがない。悪いデータが出て、米に影響が出れば、恐怖心が一気に拡がる。今回の放射能の問題が起きて、小型のRO膜浄水装置を開発した。間伐材を活用した木工のケースは仕上がりが良くて、日本の技術の底力を感じている。また、放射能の影響からかホームクリーンの純水化を要望されている。RO水が一番安全な水になるので、今後は、海外向けに開発した軟水+RO水のハイブリット式の浄水器の製造も開発も加速させたい。福岡と滋賀のお客さんから要望もあって遠方だが販売に踏み切った。

 私の会社は私が指揮する間はあくまで開発会社で進むが、ゆくゆくは、水野と武藤氏に、開発した製品の製造・販売を任せて、成長する会社に変身させたいと思っている。海外に販路を広げておくのも私の使命の一つだし、手を抜かずに頑張ることを自覚している。