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■ 原発による汚染問題について(その3)2011/05/30 (Mon)

 放射能に汚染された水道水が引き金になって、RO膜装置がにわかに品不足になった。私も顧客に頼まれて、急いで部品の仕入れを決め、インド、続いて中国を訪問した。インドは、日本からすると遥か遠い国だが、ビジネス価値は高い。インドは、中国に並ぶ12億の人口を有する大国で、世界がこの市場を求めた結果、あらゆる部品が集結し、お金さえあれば何でも入手可能だ。仮契約してから3ヶ月近くかけて、やっと全ての部品が揃い、装置が完成した。待ち時間は長く、ストレスが溜まったが、遅れた理由を聞くと、ポンプの磁力が強力で、航空運送の許可が下りなかったらしい。今回、このポンプを採用したのは、単独で毎分2gのRO膜を2基併用して、毎分4gの純水が製造出来るからだ。前処理には、時間1トンの限外ろ過膜と、イオン交換樹脂、活性炭を標準装着し、全体の大きさを「タテ700×横540×奥行300」に収めた“最強のコンパクト純水装置”になった。自己満足と自惚れは、よく否定されるが、私にとっては生きる糧、原動力になっている。今回も、達成したスタッフの頑張りを誇らしく思った。

 山の再生には、“間伐材の活用先”が急務になる。難しい話は別にして、私はとにかく安い素材を探していた。今回、浄水器のカバーに、杉とヒノキの間伐材を大胆に使用してみた。間伐材の利用は、エコにも貢献出来るし、アジアの富裕層市場にも、日本産木材の利用と日本の木工技術を売り込む手段にもなる。勿論、ステンレス、アルミも要望があれば製作出来るが、顧客の奥さんから「キッチンに置けるような、デザイン性に富んだ浄水器を作って欲しい」と頼まれたので、今回は女性の感性に沿ったデザインにしてみた。予想以上に、温かさに満ちた、優美な製品に仕上がった。

 先日、ナイジェリア人のお医者さんが、武藤氏と当社を訪れたが、製品の印象は好評だった。アフリカでも、飲料水確保は重要な仕事で、需要があるので、技術協力を頼まれた。

 今回の渡航で、インド・中国の農村を見たが、土壌汚染がひどかった。フッ素、チッ素、砒素、重金属に汚染されていて、解決するには、高性能、かつ安価な浄水器が求められた。農村でも購入出来るコストで製作しているが、“量産”がコストダウンの要なので、アフリカ、フイリピン、インドネシア、ベトナム、中国、インドに販売網をつくる予定でいる。

 もう一つ、緊急輸入した球体のバイオマスタンクに改造を施して、災害用に水を備蓄出来る水瓶として考えている。最近、地方自治体での電力確保等、防災への意識が高まっているのを受けて、大手が、水を備蓄するシステムを入札案件として提出した。通常、水道水はヒュ−ム菅の中を流れているが、災害時に、この配管を電磁弁で塞ぎ、水を管内に溜めて備蓄する装置を開発した。この装置を、自治体が1500万円という驚愕的な価格で落札したらしい。私は、バイオマスタンクを活用した安価な防災システムを考えているが、日本はこれからどんどん貧しい国になるし、役人ももっと勉強して、安くて良い装置を採用する強かさを身に着けて欲しい。政治家の口からも、今後バイオマスが新しいエネルギーになると囃子立ててはいるが、案外実情は知られていない気がしている。

 このバイオマスタンクと、太陽熱収集パネルを組み合わせれば、タンク内の水を35℃〜60℃の温水することも出来る。今後は、太陽熱や地熱などの自然熱が注目されるので、節電の時代にはもってこいの企画だと思っている。私は、既に2年前に組立工場の3双電源を取り払い、電気の基本料金を下げた。その節電を期に、独立型の太陽光発電システムを取り入れて、イロハを学んで来た。地下水と、太陽熱を組み合わせた“節電ビジネス”を次の仕事にしたい。

 3月11日の震災から、連日援助の報道で賑わいを見せているが、そろそろ最初ほどの関心はなくなり、被災者の自立が突きつけられている。被災していない人間でも、生きることが難しい時代に、被災者からすれば、ゼロからの出発で、本当の苦悩はこれから襲って来る。社会全体が萎縮して、よほどの工夫と、乗り切る覚悟が伴わないと成長案件は生まれない。

 我々の仕事は、隙間産業なので、今開発を完了した製品を武器に、新たなビジネスの推進を急いでいる。日本人は今まで、国民の底力で何とか乗り越えて来たと思うが、1000兆円もの債務で造り上げた国家は、中身のない、貧しい社会だったことが明らかになって来た。本来は、停電したとしても、太陽エネルギーを中心に考えれば、ここまで戸惑うこともなかったはずだが、自然エネルギーの普及は“声だけ”で、1%のシェアしかなかった。私の経験では、自らの手で電気を起こすと、素朴な自立心が生まれ、電気の大切さを実感する。これを機に、15%の節電に従うよりも、自ら電気を生み出す勉強を始めることを薦めたい。

 福島の獏原人村に住む知人から、被災地で使う、「リアカーに搭載出来る浄水器」の開発を頼まれた。福島源発による放射能拡散の対策として、RO膜装置が必須になった。当初は、飲料水用に限定し、小型のRO装置を考えたが、RO膜をメインにすると、水量が限定されるので、部品自体を見直し、同時に軟水も使える仕様に変更した。この開発話は、何となく浮着いた話で、予算も販売先もない、パフォーマンス的な仕事になりそうだったので、何とか投じた資金が無駄にならない様策を考えた。

 私のサーバーを管理する友人が、東京で水の仕事をしたいと電話をしてきた。その後、直営の店舗が20軒ほどある2部上場企業で、家庭用のRO装置を販売したいと相談された。水道水の放射能汚染が起きて、単純にRO装置が売れると見込んで、「売れるのなら買いたい、とことん安くして欲しい」と希望されたが、良く考えると都合の良い話だ。リアカーに載せる話も、この話も、先が見えない話だ。しかし、現状の閉塞感漂う社会を変えるには、とにかく“最先端の装置”を開発する以外に方法はない。苦労した仕入れルートの確立さえ出来れば、私と水野は20年近く開発に従事して来たので、何とかなる。例え製作しても、国際競争に勝てるレベルでないと売れないし、小型のRO装置の開発には、膜の容量の大きさに重点を置いた。私は何とか435gpd(ガロンパーデイ)という、家庭用でも大容量のRO膜を入手し、専用のポンプも100台分仕入れたが、最新の部品なので、周辺部品を揃えるのに時間がかかった。リアカーに載せた浄水器が好評で、10台でも注文があれば、その部品の準備も必要になる。友人が流通会社から本当に100台の注文を受けた場合も、「誰が部品代を出すのか?」という問題が起きる。残念ながら、「私」以外の答えはない。いくら自信を持って開発した製品でも、次の資金の調達が出来なければ、先には進めない。

 また、開発中の家庭用RO装置に、類似品、もしくは同レベルの装置がないかを調べた。今のところ日本では、価格、処理水量、共に当社がNO.1だった。日本で販売されているRO膜の流量は、50gpdが数社、ほとんどが100〜150gpdで、大阪の1社のみ、「1分間に1.5g出る最強の浄水器」と謳った300gpdのRO膜を使った大容量装置が際立っていた。当社は、より大きい435gpdのRO膜を使っているので、「今のところは」一番だ。しかし、このメーカーを含め、直ぐに他社も並ぶと見ている。

 通常のRO装置は、50%の排水が出て「もったいない」とされるのが、当社の製品は、排水も生活水として使える仕組みにしてある。これが一番の特徴で、墨汁を透明にする性能をもつ大型の限外ろ過膜を先頭につけている。業務用では、膜の次にイオン交換樹脂、活性炭でろ過するので、十分、生活用水に使える。当社は、毎分4gの純水を造水、軟水は毎時1000gの装置を主力に考えているので、この装置で他社と競合することはない。顧客のためには、家庭での安全な飲料水の確保も考えて、十分な性能と容量で、かつ、経済性に富んだ装置を今後も供給したい。当社の開発した装置が、海外から興味を持たれ中でも、中国が一番熱心だ。量産の話も出て、ムトウエフエーに技術移転する準備も進めている。

 水、空気、畑と、様々なところが放射能に汚染され、特に、水道水に関心が集まったが、最近は報道慣れしたのか、静かだ。しかし、中には、「本当に水は安心して飲めるのか?」と質問されるケースもあって、小さな子供さんを持つ人などには、小型のRO浄水器を勧めている。放射能が拡散し続ける環境下で安全な筈はないし、この悪夢は、10年以上続く頭の痛い問題だ。

 今後の日本経済は、震災特需で一時的には景気は上向くと思うが、日本全体は弱体化する。今後は大胆に発想を変えないと、先は苦しい。今回の被災による断水などがきっかけで、水に関心を持つ人が増えたが、未だに日本人の感覚は鈍い。もっと苦しめば、臨機応変に物事を解釈する人も増えるが、硬直した隠蔽体質の人達がこの日本を動かしている。震災復興には、10兆円以上の資金が必要と試算された。金額だけが踊っているが、政府は、お金もないのに出来もしない公約を連発し、菅首相自身の延命策が露骨で、発言を聞く度にうんざりする。この内閣は、瓦礫の処理で終わる。日本の代表企業である東電も、事実上の破綻だ。この企業の体質は日本そのもので、根本から変革しなければ、永久に日本国を消耗させる、お荷物企業になると思う。日本の安全神話が崩壊した今、日本は三流国になったと思って、自力で運命を切り開く覚悟が、今、求められている。