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■ 原発による汚染対策について(その2)2011/05/06 (Fri)

 3月8日にインドから帰国後、いざインド進出の準備を始めた矢先の3月11日、東北でマグニチュード9.0の大地震が起きた。その時、事務所で新聞社の取材中で、すぐに収まると思っていたら、ショールーム全体が2分以上も大きく揺れて、電話も不通、混乱状態になった。地震と津波による大惨事が伝わりだしたが、テレビの映像はまるでCGのようで、現実味からかけ離れた光景だった。その後も余震は頻発し、つくばもかなりの被害を受けた。あまり公にされてはいないが、政府系の研究設備も壊れ、数千億円の損失が出ている。個人的にも、今までに経験したことのないストレスに見舞われた。私は、業務用から家庭用の膜浄水装器をいろいろと開発しているが、基本は“災害時に使える浄水器”だ。台東区の隅田公園内に納めた、26000人分の飲料水を確保出来る浄水設備は、地下に備蓄した防災用水を、飲料水にする為に、10インチの大型限外ろ過膜とRO装置と組み合わせた当社の自慢の製品だ。

 その後、つくば市近郊を始め、関東を中心に『プライベート水道局』の名の下に、時間1〜5トン処理出来る、様々な仕様の膜を装着し、イオン交換樹脂と組み合わせた「ホームクリーン装置」を有志限定で販売してきた。11日の地震以降、水道は断水し、水道水の放射性物質による汚染も報じられ、東京でもペットボトルが品切れ、各地で大混乱になり、日本全体が強い不安感に襲われた。ガソリンスタンドには長蛇の列が出来、我先に水やレトルト食品を買い占める、本性剥き出しの姿に、日本人のひ弱さを見た思いだ。日本人の生活は、全てお上から安定供給された水とエネルギーの上に築かれた安全神話で、この地震は、この神話を根底から吹き飛ばし、電力を我が物のごとき独占した企業群の危機意識のなさを暴露した。

 つくばから30分ほど離れた阿見という所に、N経新聞の部長宅があって、二所帯分の大型浄水装置を求められて納入した。私も、卑しい計算があって、大新聞社の部長なので、少しは宣伝してくれるのでないかとの、淡い期待があって受注した。しかし、先方は、何故こんなに高いのかと疑問に思われ、何度も何度も細かく質問されて、調べ上げられた。硫化水素ガスをとる装置も説明が難しく中々我々の真意が届かなかった。奥様も、浄水器に70万円を超す金額を出すことは嫌なようで、私が挨拶しても、空気が重かった。良質な水を体験した人でないと、水の違いは分かりにくい。まして軟水の効用を話しても、チンプンカンプンで、使って満足しなければ、引き上げても良いと伝え納入した。納入後、部長自ら訪ねて来て「11日以降、地下水層の変動が起きて、井戸水が濁って使えないご近所の人から、きれいな水を求められて、奥さんが喜んでいた」と報告を受けた。他の顧客の浄水装置もほとんどが無傷で、近所の方に配って喜ばれたと報告を受けた。プライベート水道局を提唱してきた私の、“自立した生活スタイル”の提案が、実ってよかったと思った。

 東電の福島原発は、地震以降ピンチの連続で、世界の関心を集めている。政府の発表より海外の目は更に厳しいと思う。この間、私は海外と日本で見聞きしたので、個人的な意見だが、枝野官房長官の政治センスが極めて悪い印象だ。全て言い訳に聞こえ、あげ足を取られたくない一心の言葉には暖かさがなく、心に伝わって来ない。管総理も他人の意見には常に反論調で聞く気にならない。両者は同じ体質の人で日本人には珍しい人達に見える。例えば、「小規模の水素爆発を起こした」と説明されても、映像を見る限り、建屋は壊滅状態で、崩壊にしか見えない。水素爆発という表現も、際どく曖昧な表現で、ヘドロの汚染を見ても実際は、小規模と軽く語っても、核分裂に近い爆発に見える。発表より強い放射能汚染が蔓延して国民はもっと深刻に受け止めていると思う。断水、停電、電力不足に次から次へと問題が拡散して、国が地盤沈下を起こしている。震災で東北地方は、自動車や半導体の部品工場、木材等の生産工場、石油関連施設が密集し、農業と漁業も日本の生産量の30%に及ぶ重要な生産基地があって、日本のものづくりの財産が、この地震と津波で一瞬にして消え失せた。

 私は、地下水を浄化するメーカーで、今が出番だと感じ、実際いろいろと相談も相次いだが、事態が時間とともに動いて決定的な話はなかった。そこで、私が下した結論は、性能を維持しながら、とにかく安く提供してあげることが大切で、“絵に描いた餅”にならない為に、インド向けに開発中の装置を、転用して日本向けにも販売することで、大幅にコストを下げる努力を始めている。

 原発から20キロ圏内に住む、獏原人村の建築家から、「リアカーと自転車を使って、移動出来る浄水器を造ろう」と電話をして来た。この人は、自給自足を目指す自然派で、魅力的な人物だ。この人の周辺には自然派の人が多く、私もアースデーというイベントに誘われて、PR活動をしたことがある。その時、自然派の人たちの考え方を少し拝聴したが、経済やビジネスとして捕らえると、何か力不足に見える。夢を実現するには、ファイナンスの能力が必要で、資金の目処がつかないと単なる夢で終わってしまう。

 水道水が放射能物質に汚染された以上、被災地に持っていく浄水器も、放射性物質をろ過する性能がないと、役には立たない。零細企業が単なるデモンストレーションをしても物笑いになる。今のところ、放射性物質を除去するには、「RO装置」が最低限必要な能力で、かなり高額な装置になる。誰でも買えるコストにするには、膨大な資金が必要になるし、この条件に合ったRO装置を開発するには部品を大量購入する以外にはない。

 報道の中で、中東の大金持ちが、福島の浄水器メーカーに資産30億円を支出し、リアカーで運べる浄水器を100台買い上げたと聞いた。一台300万円のRO装置はかなりの高額だと思うし、嘘だろうと思う。金額が事実なら特別の性能が備わったもので少し興味がある。別の自然派の人の意見だが、今後、日本人の経済力は落ちて、年収100万円の時代が来ると言う。私もこれは頷ける金額で、今の中国並の生活水準で悪い環境でもない。

 今月中に、リアカーに載せて運ぶ浄水器が完成する。ステンレス製で、毎分500リットルの能力の手押しポンプで水を汲み上げ、限外ろ過膜を通し、1分間4リットルのRO膜を取り付ける。汚染された水でも、限外ろ過膜、イオン交換樹脂、活性炭、RO膜と完璧な浄水工程で仕上げる。一台300万円の浄水器と比較し、当方は50万円。能力は遜色ないと思う。もちろん、太陽光発電でも動かすことも可能になる。開発するコストは、人が想像するより莫大な金額になるが、予算の目処は立ちつつある。

 今、放射性物質が水道水を汚染した件で、小型のRO浄水器が売れ、品不足で、価格も高騰している。被災地で、デモをして、好評だったら、量産体制が整わないと話にならない。メーカーは生産の継続性が命だし、「素晴らしいネ」とか、「こんなところで使えるネ」という気軽な感じでは物は作れない。平時であれば、つぶやきで終っても、悲惨な被災地では、全てが真剣勝負になる。とにかく10〜20台製造して、福島、岩手、宮城県の困っている人に部品と技術を供給して、現地で生産まで考えてあげて、少しでも儲けが出る仕事になれば意味がある。スモールビジネスが育って、復興の力になればやりがいがあるだろう。

 水の確保が出来ないと話にならないので、水を備蓄するタンクを探した。一年前に、つくばの産総研の仕事で、バイオマス技術に関した、組み立て式のタンクを知った。PP(ポリプロピレン)という丈夫な素材を使っている。急遽、この会社を産総研の博士と訪問して、10基緊急輸入することを決めた。このタンクに水を蓄え、限外ろ過膜を使った大型の平膜をタンク内に設置して汲み出して使うと、多くの人たちが、安心して水を使える装置になる。『タンクろ過膜浄水装置』を急遽完成させる。今後、コストを大幅に下げるには、量の確保が重要で、日本の市場は小さくて、インド、中国の大市場が必要になる。先般、中国から急いで訪中を求められた。訪問の目的は、石炭の採掘現場で地下の構内の飲料水の確保だった。福島の原発事故が起きて、世界的に石炭の増産が始まって、構内の石炭に汚染された水をろ過出来る浄水器が欲しいと、中国の資産家が私を招待した。当社の手押しポンプ式浄水器は、クロスフロー方式の限外ろ過膜が装着されているので、汚染水と良質な水を分離できるし、墨汁を分離できる性能に目をつけたらしい。その様子をホームページ上で、動画として公開しているので、インドと中国から問い合わせがあった。今月5月の末までに、試作品を作り、数百メートルの地下水を飲料水にするテストをする。成功すれば、中国が大量にこの装置を購入したいと提案され、今回西安で資産家と会ったが急ぐように頼まれた。もちろん量が増えれば、コストは大幅に下がり、20万円そこそこで被災地の方々に提供できる。今は、まだ大きな話で、夢物語の最中だが、各地から集めた部品がテーブルに置かれている。プロットタイプのデザインも出来て試作が始まる。私も命がけで、2ヶ月で3度も渡航したので、正夢にして見たいと、夢を追いつつ、日々病気と共生している。