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■ 緊急報告−小型で大容量のRO膜を開発−2011/03/23 (Wed)

 一昨年程前に、福島県の獏原人村に住む、太陽光発電で生活をしている建築家の人に会いに出かけた。奥さんは、自然の中で人間が生きていくことを追及している有名な方で、マスコミにもよく取り上げられている。その後、11月には、太陽光発電と、電動自動車で引くことが出来るリアカーを造って、これに手動式の浄水器を載せて、災害用に使いたいと相談された。リアカーに載せる必要性はないのではと思ったが、今回の大震災報道でも、各地で、飲料水を始め、生活水に困っている様子が伝えられた。水の悪い外国向けに開発した、UF膜付の手動式浄水器が注目されだした。現在、産総研のベンチャー企業であるつくばテクノロジー社が、私の中国ビジネスの窓口になっている。ここの博士から、「出資するので、川手さんと共同で、被災地に手動式の浄水器を寄付しよう」という提案があった。この装置に最初に興味を示してくれたのが、ウイグルの地方自治政府で、わざわざウイグルから元大学教授が視察に来られた。海外からの期待が多く、ネパールにも供与し、インドからも、導入に関して具体的な話になっている。

 今回の被災を受け、再建に貢献する為に何か手助けをと考え、急遽、インド向けに開発している6インチUF膜フィルターの浄水器と、小型RO膜浄水装置を国内仕様に変更して製作する。6インチの大型膜フィルターは地下水を1時間2〜3トン、濁度や大腸菌を除去する性能があって、複興に役立つと思う。被災地は今後、生活水、工業用水が大量に必要になるので、ニーズは高いと思う。
 
 次に、1日5トンの飲料水を精製できるRO膜のろ過装置も開発している。新しい膜が使われているこの装置は、1時間1.5トン処理のUF膜とイオン交換樹脂を前処理にして、新型のRO膜を4台連結装着する。この小型のRO膜は、日本初の仕様で、1本で432GPD(gallons per dayガロンパーデイ)もの水を精製する特殊な膜だ。リットルに計算すると、1時間あたり60リットルの飲料水が出来る。成人が1日平均2リットルの水を摂取すると仮定すると、800人分の確保が出来る。加えて、太陽光発電でも使用可能な、小型のモーターを駆動源にしている、将来的には、太陽光を使った次世代型の仕様としての改良も考えている。この装置を、今回被災された大塚さんから頼まれたので、急いで生産する。大塚さんたちが集めたボランティア団体に提供し、多くの方の飲料水になる予定だ。

 一昨年の12月22日に、中国から、太陽光発電システムを輸入した。パネルが10枚、バッテリー、インバーターなど一括して購入し、独学でどこまで設置が可能かという勉強も兼ねて、つくばの工場に取り付けた。工場には、約27uのコンテナがあって、この空間を、太陽光発電で賄えるシステム開発に着手し、ノウハウを身につけた。日本の太陽光発電は、ほとんどが「売電型」で、電力供給会社に直結したシステムが主だ。太陽光発電で得た電気の余剰分を電力会社が買い上げてくれるという仕組みにして、政府は、補助金をつけてエネルギー政策の切り札として普及に努めてきた。私は、この売電システムが本当に経済的なのか疑問に感じていたので、迷わず独立型を学ぶことにした。

 太陽光発電がエコビジネスとして、成長産業になると判断して、建設会社の多くが補助金を目当てで取り組んだが、始めてみるとさっぱり儲からなかった。限られた会社が扱う仕組みで、普及はしても、成長産業にはならなかった。電力会社に接続しない独立型に至っては、ほとんど見向きもされなかった。

 3月11日、マグニチュード9.0という有史以来最大の地震が東北地方を襲った。震源地から500kmという広域で被害を受けて、電気・水道・ガスなどのすべてのインフラが一瞬で消え去り、生活が崩壊した。もし、太陽光発電の独立型システムが認知されていたら、停電の中でも、多少は自家発電が出来たと思う。電力供給会社に直結した太陽光発電の悲しさから、自然エネルギーの活用はなされず、偽りのエコは吹き飛んだ。私は独立型を選んだので、明かりに困ったことはない。停電でも使えるように、冷蔵庫にはリチウムイオンバッテリーを常備しているので、安心感がある。1000兆円の債務の政府、独占的に電力を牛耳って、少しずつ電気代を上げ、太陽光発電を入れていない家からも、太陽光の名目でお金をとるマンモス企業とは、少し距離を置いて、冷静に実態を見て判断すべき時代になったと思う。

 私は、以前から、『自己完結型の生活』の推進を提唱している。命に欠かせない水も、水道にだけ頼ると、今回のようになる。地下水を利用するにしても、高度な膜処理すれば、いざという時も安心して飲むことが出来る。当社は、“プライベート水道局”として、井戸の元につけて、家全体の水をきれいにする「ホームクリーン浄水器」として普及させている。この装置は、他社と比べると、1時間に2〜3トンも浄水出来るので、処理水量が圧倒的に多い。水と電気を自己の力でコントロール出来れば、安心感は大きい。自ら投資したシステムで得た自然エネルギーを、安く売る仕組みは根本的におかしい。せっかくの自然エネルギーは全て、自分たちで消費するのが、普通の考えだ。

 福島の原子力発電所が崩壊した今、放射能の拡散の恐怖に日本全体が動揺している。福島、茨城、栃木、群馬、千葉の農産物からも、放射能汚染のデータが出始めて、より大きな衝撃と不安が増幅している。私は、地震が起きる数週間前に、千葉の旭市を訪れた。NPO法人施設の井戸水が飲めないという相談を受けて訪問した。非常用の手押しポンプ付浄水装置を持参し、ここの井戸水がどれほど浄化出来るのか、会員の人たちに披露する予定だった。日本人はあまりに恵まれていて、非常時に対する危機感が浅く、区役所などの危機管理体制に任せきりになる傾向がある。今回の災害時には、役に立ったであろう装置も、先を見越して準備する人がいなければ、ただの機械に過ぎない。この装置を使って、浄化した水を、水道法に基づく「50項目」で検査を受けたが、49項目が基準値内で、蒸発残留物のみが基準値50に対して、57と僅かに上回る結果だった。

 この旭市が、今回津波による壊滅的な被害を受け、更に、野菜が放射能汚染されているという報道が出た。千葉まで汚染されているという事実にも驚いたが、地図を見ると、つくばの水道水となる霞ヶ浦の水も、この近くにあるので、長期化した場合、水源が放射能に汚染される危険すらある。既に、福島県の水道水は汚染されていて、数値はピンと来ないにしても、その水を飲むことに恐怖心があるのは当然だ。

 日本では、30キロ圏外は安全だと言っているが、アメリカ政府から米国民に向けて、80キロ圏内からの退避が勧告されていて、情報は錯綜している。多分、福島の原発は、うまくいったとしても、沈静化に数年はかかると思う。最悪、農作物や水源の汚染も危険性が増していくだろう。ピンポイントで掘ってUF膜でろ過して、最後にRO膜をつければ、地下水を掘って、汲み上げる方が、大量に処理する水道水よりも断然安全だ。
原発が停止すれば、電気の総量も大幅に減って、電気の不足が日常化すると思うし、新たに原発を建設しようとしても、国民の同意は簡単には得られない。これらの問題を解決するには、1〜2kWという限定した範囲を補える電気量の太陽光発電システムを普及させる以外にない。最近では、一枚のパネルで300Wの容量をもつパネルも出てきている。6枚のパネルで、1〜1.5kWの発電能力を得られれば、冷蔵庫や、テレビ、27uの面積を照らせる照明も確保できるので、独立型の電源システムを取り入れることを薦めたい。この震災を機に、日本政府や大企業に依存する生き方を改めて、自己の力で太陽光発電システムを学び、地下水の利用を見直して、自己完結型の生活スタイルを再検討してみるのもいいのではないかと思う。

 3月2日から赴いたインドでも、太陽光発電について、現地の専門家と提携して、300Wのパネルと独立型の電源システムの技術を入手する話も進めている。井戸ポンプの制御も、従来の電源に頼らずに稼動させることが出来れば、更に安心して井戸水を使うことが出来る。これからは、この太陽光発電式浄水装置の普及に努めたい。

 東日本大震災の報道を見るたびに、その規模の大きさに愕然とするが、気懸かりは原発だ。現場は報道されているより深刻だと思う。本社を置いている新浦安も、“液状化現象”による被害が大きくて近寄れない。ショールームのあるつくばは、断水したものの、すぐに複帰した。ガソリン不足も解消して、仕事を再開し、納入を始めている。奈良県五条市にある私立病院から、湧き水の浄化装置も完成した。市営なので、低予算だが、最良の装置を提供する。

 インドで大きな仕事が決まり、意気洋々と帰国したが、東日本大震災が襲い、旅の疲れも重なって体調を崩した。しかし、被爆の危険を覚悟して、最前線で働く現場の苦闘は、勇気を与えてくれている。政府の人達は、聞きかじりの情報を発信しているようで、不愉快になる。未曾有の災難と連呼して政権維持に力を注ぐ真意が見えて見苦しい。再建に当たって、多少のパニックを覚悟して早急に新しい指導部が誕生しないと再建は厳しい気がする。