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■ 水の力、酪農の活性化に挑む2008/11/24 (Mon)

 眼の手術の為に2週間程入院した。訴訟問題の多い時代で、難しい医療を拒否する医師が多い中、手術を請けて戴いた。医師からは視力の回復は無理だが、失明を一日でも遅らせるためにと薦められた。

 11月1日に士別のレストランがオープンした。この牧場の水は私共が担当し、大きなプロジェクトにしたいので、最新の膜浄水装置を提供した。オープン前に水の様子を聞くと評判が良かった。水野に、美味しいらしいと伝えると、2機目は臭いがするという人もいたようだ。士別の丘の上に、ライトアップされた洒落たレストランが誕生していた。オープンから一週間過ぎた9日目に現地に伺った。水を飲んでみたが、問題はなかった。新築のレストランで配管の臭いが少し残る。水は軟水で、純水に近い高度水だし、パイプに付着した臭いも敏感に吸収する。しかし、今は随分良くなったと喜ばれた。中はデザインで柱が多く、少し手狭に感じた。道内でも数台しか導入されていない急速冷凍のCASを備え、レストランの総工費も1億円を越す。食の根源である水も、半導体に使われる最高のレベルの装置を導入した大胆な計画で成り立っている。この会社の親会社は、地元の有力企業で、新規事業によって地方の経済を支える使命を帯びている。奥さんは、親企業の副社長を兼ねた、この使命の担い手だ。この会社は羊には皆な素人で、市から酪農の支援を頼まれて引き受けた。しかし、飼料の高騰、後継者不足、零細の酪農経営は厳しい。農業、酪農を守るには力のある会社が肩代わりし吸収しないと日本の農業、酪農は壊滅する。レストランはその羊肉に付加価値をつける為に企画されたと思う。この企画は同じ業態だが、生産者の立場とレストランと言う消費者の立場では異なるので両立は難しい。当初、責任者の今井さんが水の事でつくばに相談に見えたが、羊で儲かるとは思えなかったし、レストランも難しいと思っていた。試験的に自宅にホームクリーン装置をつけて能力を確かめて次のステップに進む話でまとまった。

 以前、S製鉄では技術開発N新製鋼で、新規事業の仕事を担当し、レストラン、ホテル、老人ホームなど100件以上の案件を立案した経験がある。その後独立して、Aの素、F士レビオ、N鋼管とコンサルタントの仕事をしてきたが、食に関係する仕事は非常に難しい。装置を納める為に、牧場を訪問し車で敷地を案内して貰った。100万坪以上の広さがあるらしい。羊の飼育の話があってから、雑木林・山林を土木の会社らしく開墾して、つくりあげた。雄大でヨーロッパ風の敷地が完成していた。工事の実費で6億円の資材と労務費をかけたらしい。外部に頼めば10億円は越す工事だと思う。この広さがあると水の仕事が出来る。雪水と井戸水を混ぜればミネラル水をつくれる。スペインでも淡水化技術を導入し、飲料水・農業水に使っているが、純水にミネラルのある井戸水を混ぜている。雪水は大変重要で飲料水には欠かせないが、酸性雨や農薬の降り積もった土壌を通過する際に、雪水も汚染されてしまう。その為、直接は飲めないが、膜と樹脂等、半導体にも使える浄水技術を駆使すれば大きな価値を生む水になる。

 富良野に浄水機を取り付ける途中で、少しだが観光で有名な富田ファームによった。富良野は観光客が多く詰めかける場所だが、採算に乗るには20年の歳月と努力が必要だったらしい。「北の国から」で全国に知られた富良野だが、この士別も水を前面に押し出せば、有望な場所になると思う。羊は350頭に増え、来年には建屋が増設される。数年後には日本一の規模になると思う。水をキャンプ場にも使いたいと話が踊りだし、限られた予算の中で全てがお任せで仕事を請ける事になった。最低6トン/時間の装置を考えた。水道水だと8〜10トン/時間の装置になる。ここは井戸水の為、イオンを除去する樹脂も大型になる。牧場の造成・改築・レストランの建築・農園、大きな投資で普通の会社では真似の出来ない規模になった。同じ時期に、大分からも年商30億円のゼネコンの社長が来られた。15億円の補助金を得て、30億円の予算で「水耕栽培」の新規事業の為に、浄水機の事を聞きに来られた。よく考えるとこの話も採算に合わない。しかし、採算に合う、合わないという問題より、日本の農業を守るには大きな策が必要になる。この計画を見ていて、ゼネコンの力をうまく活用できれば農業は生き返る事が出来ると感じた。「食」は、命の安全を守ることだと考えれば、採算より農業を守る振興策を考える方が大切である。現実に地方では農業は衰退して新しい転換が求められている。だが、現場では、なぜ土木会社がレストランにお金を注ぐのか、それほど儲かっているのであれば給与を上げるべきだ等、批判も多かったと聞く。今、士別だけではなく世界が金融崩壊し、日本全土が破産状態にある。政治にも頼れない。この国の指導者は生活感に乏しいし、若者は希望が持てない。私は職場の確保が新規事業の一番の役割だと考えている。

 今回の企画はCAS急速冷凍技術で「いつ食べても新鮮」を売りにし、羊のビーフ肉が主役になる。従来のような屑肉を集めて肉を固め香辛料で臭みをとる焼肉と違い、ビーフの希少価値を掲げた企画だ。試食をしてみたが、美味しく食べられた。臭いもしないし、生のレバーも美味しい。羊肉のビーフ・骨付きグリルが1500円だ。メニューを見せて貰ったが全体的に安い。羊は牛と比べて小柄で生産量は少ない。羊の肉料理は東京や札幌では1万円ほどする料理らしい。

 この会社の人達は羊を飼う事からレストラン企画、運営等の素人だが、凄いスピードで立ち上げた。今後は公共事業の仕事も減るし、水と食の仕事は重要なアイテムになる。羊の町の伝統を守るにはレストランの運営に行き着くが、運営・企画を工夫すれば、成功する。この親会社の社長は80歳前後だと思うが、今でも朝6時半から陣頭指揮し、一代で20億円を超える企業に育てあげた。その血を引き継いだ彼女は謙虚さの内に強かさと固い信念があって凄まじい。奥さんから「人が足りない」とオープン時に電話があった。田舎の町で突然、東京並みの洒落たレストランで働く人を見つけるのは簡単ではない。飲食業は長時間働くし過酷だ。私はすぐに応援を送る事にした。急場だし、娘と麻衣子を10日程行かせる決断をした。ウエイトレスでも皿洗いでもして働くように指示した。娘と麻衣子は私の秘蔵っ子で、麻衣子は表の顔、麻紀は裏方が似合う。二人とも心の優しい子で、麻紀は人見知りで行動は慎重だが、慣れだすと我慢強いし戦力になる。先方は迷惑気だったが、私の判断で押し切った。この二人は中国にも一ヶ月、バリにも一ヶ月行かせ経験を積ませている。客扱いされて使って貰えない場合は、割り込んで仕事を奪えと指示しておいた。だが、奥さんは遠慮なく彼女達を使ったらしい。麻衣子はホール、麻紀は洗い場を担当したと連絡があった。レストランも滑り出しとしては順調で評判になっている。

 羊に飲ませる水・農作物用・レストランに使う水のどれも、大型膜に加えて重金属イオンをとる機能もつけた。多分、世界初だと思う。いつも農薬が騒がれるが重要なのは水で、この事はあまり論議されないが、次の雪水プロジェクトへの足がかり出来た。中国、ベトナム等、日本の食品会社から食品の洗浄の事で相談されるが、食品の安全には水の浄化が鍵になる。良い水を飲めば家畜の肉質も良くなるし、病気にもかかりにくい。養鶏場でも卵の品質が向上した実積もある。北海道の雪を活用する技術と装置が揃えれば、資源に換わる。「雪水」の名で飲料水をつくる案も考えて装置を考えている。北海道は水が綺麗だと思われているが、これも神話で、現実はかなり酷い。直接井戸水を飲めない地域も多い。富良野に装置を入れたが、洗濯さえ出来ない地域がある。

 真冬は−30℃になるので、羊用の浄水機は地下に埋めシェルターに収容する形になった。この会社の凄いところは仕事が速く大胆だ。大きな穴を掘る案など普通は考えつかない。水の仕事はプロセス技術で、納める場所や配管も技術者の腕次第で仕上がりが変わる。この工事を終始見ていたが、合格点で安心した。私は10インチの大型膜を提供したが、このメンテナンスを地元の技術者が学んでくれれば、次の雪水プロジェクトの目処が立つ。水野はこの膜を台東区に昨年1基、今年2基を納入する。大型膜装置はサイロの中に収め、このプロジェクトを完了させた。我々の浄水技術としずお建設の土木技術と組めば、北海道で水のプラント会社が誕生することも可能だ。

 アメリカの金融が崩壊して世界中に影響が広がりだした。不安感が増し、今回は深刻で根が深い。数年は苦しむと思う。当社は何でもつくれる技術があるので、景気が悪くなると大きな相談も寄せられる。9月頃から厳しくなったので、仕入れに力を入れてきた。不況になるとチャンスもある。取引が無理な会社からも物が買えるし、来年度の商品の仕入れも概ね完了した。サイクルが激しくて、倒産、リストラの話ばかりが聞こえて来るが、つくばの周辺は、ダイワハウスが新しい大型ショッピングモール「イーアス」をオープンさせ、大渋滞で車が進まないほどの賑わいだが、小さな商店、企業は厳しい。次は土浦、下妻市、阿見にイオンを初めとして大型店が続々新装オープンするが、数年前の計画が実現しただけで、総崩れすると思う。企業は競って値下げに走り販売に力を入れているが、買いたい商品は少ない。

 熊本の大学が当社にオリジナルのマイクロバブルの装置をつくってくれた。一台購入して実験している。純水にプラントパワーの溶液を500倍から1000倍に希釈して投入、イオン交換樹脂を通して微量金属を取ると、無臭で透明な溶液が完成した。酵素とアミノ酸成分のため、浸透性に富んでいる。マイクロバブルにオゾンを混ぜて膜を洗浄するシステムも実用化したい。近々、RO装置とマイクロバブル装置を組み込んだボトリング装置を完成させる。膜を前処理として、RO水とミネラルを含んだ水を混ぜる際にマイクロバブル装置を使用し、飲料水にする。ボトリング機能も備えてあるので、幅広く使えるだろう。病院、美容院、薬局やレストランに置きたい。自販機にもなるので、マイクロバブル水は注目している。

 銀座の和光から装置(2トン/時間)を受注し、25日に納入する。水は水道の水で問題はない。3機目だし、安く提供したい。次いで、つくばの大穂地区と南房総に納入した。印旛地区からも見えられたが、3軒分の水量で、少し詰めが必要になる。

 18日にインドから客が見えた。5台程ODAがらみの仕事を頼まれたが、円高で商談は難しい。超純水装置の受注は2機内定しそうだ。岐阜に新工場が出来るし、井戸水はオルガノも断るので当社に決まりそうだ。台東区の非常用の大型装置も2機決まった。天理大学の証明書発行機も3台決まり大型の受注が内定した。今回の不況は大きな転機で、金持ちが投資で大金を失い、アメリカのビジネスモデルが崩壊、投機マネーが集中した資源価格も暴落した。「ざまぁ見ろ」の心境でもある。ものづくりがにわかに注目されだしたが、深い傷として残るだろう。

 ブッシュは最悪の大統領だったが、にこやかに「グッバイ」と軽く挨拶して消えた。何と軽い男だろう。この軽い男に世界は振り回されたと思うと情けない。小泉氏が改革を叫び、国民の支持を集めたが、日本を破壊させた。医療を破壊し、教育を破壊し、三位一体の名で地方自治を破壊させ、公務員のモラルも低下させ、防衛、農林、年金、福祉を破壊した。アメリカはブッシュの8年で崩壊し、日本の小泉政権の5年間はアメリカの強欲に手を貸した。このつけは大きかった。今後、日本はもっと貧しい社会になると思うし、それによりモラルのない社会になる恐れがある。政界も分裂をくり返すだろう。ドルも安くなって100円を割っても驚かなくなった。円高は国民にとって本当は有利な面も多いのに、輸出依存の体質を改めなかった。今後は、円高に耐える習慣性が必要になる。時代は内需。トヨタとキャノンが日本経済を牽引して来たが、自動車産業は終焉したと思った方が正しい。オバマが自動車産業に力を入れる気でいるが、アメリカの自動車産業の再建は無理だ。アメリカは深い眠りにつくが、日本は世界からたかられて、一番大変になる。

 岐阜の武藤君、士別の平塚君、つくばで修行中の上田君、麻紀に麻衣子と若い人が育つと嬉しい。韓国も大変だが、2名ほど人材がいる。大きな仕事がまとまれば集まって働ける。大きな仕事を生み出して愚直に生活に合った水の装置を生み出して進みたいと思っている。

 最後に、真冬の士別のレストランも営業しております。春の士別も素晴らしい場所です。時間があれば、どうぞ士別の牧場へ行ってください。詳しいことは私たちに聞いていただければ、ご案内をいたします。素朴な人達にお会いできると思います。