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◆ おごりは破壊を招く2007/08/16 (Thu)

 「美しい国、日本」安部氏のスローガンは選挙に敗れ、随分色褪せた。3年後憲法改正を発議すると息巻いていたが、民意は、おごりを許さなかった。個人も会社も調子に乗ると、おごりの心が芽生える。小泉政権から安部政権に権力が譲渡されたが、見かけだけで、張子の虎であった。小泉流の郵政のペテン八百長解散で自民が大勝し過半数をとった。数を力に、強行採決を繰り返した。この暴挙に国民の怒りが爆発した。安部政権は国民を見下して、舐めきっていたが、民意は、珍しい抵抗をした。アメリカのブッシュ大統領もおごりで、戦争に突入し、国内外の世論の支持を失った。権力者は何時の時代でも、おごりで、失敗し、同じ轍を踏む。イラクとアフガンで4000名を越す若いアメリカ兵を失った。この罪は大きい。イラクの戦争に勝利していたら、力の政策で、戦火は各地に拡大していたと思う。私は小泉人気が頂点の時から小泉批判を繰り返して来た。彼に政治を任すと、日本は破壊され衰退すると思っていた。彼の政権は長期で、5年を超えた。マスコミに話題を振りまき人気を博したが、功績は見られない。不良債権を処理したと評価する意見も聴くが、銀行の経営者も馬鹿ではないので政府の保護の下では不良債権は処理出来る。経済が回復したと威張っても、アメリカと中国の経済のお陰で、特段政策が効いたとは思えない。冷静に見ると、格差をはじめ、負の遺産の方が大きい。その一部を取とりあげて見ると、医療、福祉、介護、年金、食、環境、少子化、産婦人科の医師不足。自殺者の数は年間3万人以上。この死者数はイラク戦争の倍だし、農林、漁業も、後継者不足、温暖化対策も掛け声だけ、異常気象が増え災害も多発している。原発の地震事故で、世界を震撼させた。談合、天下りは減らないし、改革より壊滅状態だ。地方財政も深刻で、小泉劇場で、地方が切り捨てられて、マスコミ受けしたが、全てが、現実は臨終状態だ。膨大な為替の介入で、円安策を加速させ、そのつけも大きくなりだした。円の価値が下がり、国が軽く見られだした。政治家と金が問題になったが、政治家と金の問題はささやかな問題で、国民の怒りは、政治家の感覚の鈍さとおごりに憤慨した。公明党も敗退した。自民の補完勢力であったが、この政党も権力に酔って、おごりが出て、見苦しかった。強固な支持基盤に胡坐。権力の片棒を担ぎ、調子に乗り過ぎた。参議院で、野党にたった自民と共闘の道を選ぶのか戦略が気になる。中国に米が輸出された。価格は、日本の20倍。中国の富裕層も驚く高値だ。日本では売れない米を売るのに、この高値では先が暗い。日本の米は、美味しいと言うおごりがここにもある。

 80歳を越える知り合いの社長が、病気になり、呼吸ができなくなって苦しい。酸素を吸いに来た。10回試して、買いたいと言う。年寄りは死ぬ寸前になっても節約する。苦労して貯めたお金を使いたくないのだ。お金より、体を大切にして欲しいが、年寄りには通はじない。アメリカも老朽化が進んでいる。高速道路の橋梁が崩落し、ニュ―ヨークでも蒸気配管が破裂し、共に40年前に造られた物で、老朽化が進んでいる。全米の橋を点検すると、改修費だけで、22兆円もするらしい。
 
 私の会社は小規模だが、時流に乗り忙しい。アクア・デザイン・ネットワークと言う企画会社からインドのプロジェクトに参加するよう要請を受けた。この種の企画話は良く持ち込まれるが、インドは興味があって、企画者を秘密の製造場所に案内した。台東区に8月10日に納めた浄水器の最終デザインが少し形になりかけた様子を見せた。約25,000人分の飲料水用の浄水装置を連日徹夜して形にした。隅田公園に設置するが、公園は、地盤も弱く、大型の搬送車両が入れない事が、工事会社から直前に連絡を受けた。急遽、2人で、運べる重さに分断し、パズル工法に構造を変更した。私は叱咤激励するだけで、現場は徹夜の連続で混乱したが、9日の夜に、仮り組みを完了し、徹夜で再度バラシして、現場で組み上げた。先般納入した神奈川のS神社も地下に据え付けた。マンホールで地下に降りて、部品をバラして持ち込み、組み立てた。零細企業の仕事は大企業が採算上見向きもしない仕事を受注し顧客の要望に沿はないとチャンスは掴めない。
 8月10日東京は35℃を越える猛暑。私も現場に立ち撮影を担当したが、一番の心配は暑だった。作業は猛暑の中で続けられ、見ているだけで、心が痛かった。この仕事を請けた動機は、区の役人に頼まれたスタートした。東京が被災すると大変な事になる。23区の防災井戸の状況を東大生に頼んで、調査したが、備蓄されている水は50項目で調べると飲めない。飲めない水を備蓄してと、怒っても結論は飲めないのだ。隅田公園の備蓄の水質をTDSメーターで計って見た。3000から3500はありそうだ。私はこの仕事を相談された最初の打ち合わせの会合で、飲める水にするには、膜ろ過とRO膜を使う以外にないと提案した。プロジェクト請けた動機は、予算から見て、当社しか出来ない仕事であった。それと、実積を狙った。一回目は、採算割れを覚悟したが、破格の価格で入札が行われた。災害用の大型膜ろ過装置は、初登場になると受注したが、過酷過ぎた。膜浄化法が採用されて、その意義はあるが、妥協し過ぎて反省点も大きかった。試運転の様子を聞くと、意外な報告内容だった。UF膜を通してもTDSが2000もあると言う。一晩置いて朝早くから再度通水テストを行った。台東区役所の設備の係長が来て原水槽の蓋を開けて貰った。見た目はどす黒く水は濁っていた。TDS測定器で計ると3000を超えていた。

 女子学生が、私の会社に勤めたいと言う。娘さんの母親が、心配して、「川手さんの会社は、特殊な会社だから、辞めなさい」と忠告する。OLになって安定した職業について欲しいらしい。親の、目より、若者の目は本能的に先を見ているのかも知れない。企業に就職しても夢が持てないのだ。「保険」と「給与」の事を聞きに来た。私の会社は、「終身勤続」。「保険」は、国民保険。「給与」は働き次第と答えた。給与は働き次第と言われても今の若者には理解が出来ない。今時の若い人の感覚は、会社に出向くとお金が貰えると思っている。私はアマチィアの人は採用しない。プロは仕事をこなして金になる世界。日本の企業ではプロは育ちにくい。22歳の学生が年金を貰う時期は、50年後だ。50年後を心配しても始まらないが、スケールが小さい。15年後には年金制度は確実に崩壊すると思う。国に寄り添った寄生虫になるのか?自分の可能性に期待するのか?選択だ。働く前に安定を願う気持ちもわかるが、私は、厚かましさにウンザリする。
 私の父親が、定年を迎えた時に、私に、「寂しい」と言った。まだまだ「働きたい」と言って、退職して直ぐに亡くなった。死ぬ寸前まで、「寂しい」「働きたい」の言葉は遺言だと思って鮮明に覚えている。私は、46歳で、大手企業を独立したが、失業しても、私は、その時々の時流に乗り、組織で働いていた時より、豪快に生きられた。ガムシャラに働いて来たが、少し、手応えを感じ出したのは、膜の技術に出会った4年前からだった。その間、大金を儲けたり、色々優秀な人材が私の元で、働いた事もあったが、不安で仕方がなかった。水野が22歳の時に私と出会い、海外の仕事を二人で遊び回っていたが、彼が救世主になるとは思わなかった。私の体が優れないので、アメリカから日本に呼び、お互いに先の事を考える余裕もなく働き続けた。膜のメーカーと出会い、膜浄水機を開発して、少し仕事らしくなってきた。旨くすると、生涯、働ける仕事になる予感がした。20年前に水の将来性を見て、仕事を始めた。水の自販機を開発したプロジェクトにも、大勢の仲間が集まったが、プロジェクトが壁にぶつかると一斉に離反して行った。水の将来性は分かっていても、仕事にする才能が無かった。

 つくばで、倉庫を借りた。300坪の広さだ。この人の紹介で、娘と就職を希望する娘さんをバリ島に勉強に行かせた。3月にも中国に留学させた。中国は学生寮、緊張したのか娘に、「又、行くか」と聞くと、「今は遠慮します」と返事が帰って来た。当初、中国の西安に行かす予定でいたが、中国も問題が多い。バリは観光地だし、この地を選んだ。今の若い人を教育するには、遊ばせてから教える方が近道である。劣悪な環境も贅沢な生活も遊び心があれば乗りきれる。日本は残念ながら衰退して老人国家になり、この国で教育しても、無理だ。日本は戦後60年過ぎて老朽化が激しい。貧しい生活も体で教えないと理解が出来ない。
 隅田公園に隣接する古い洋食の食堂がある。80年以上続いている。83歳になるおばあさんが働いていて、私に「何歳になる」と尋ねて来た。私は「65歳になる」と答えると「まだまだ、働ける」と言う。この人の主人は80歳で大工の仕事を辞めたらしい。80歳まで働いてたと聞いて驚いていると、今は家でゴロゴロして見苦しい。「男は何歳になっても、働かないと駄目だ」と言う。私は、働く場所があるので、感謝している。隅田公園に浄水の据え付けと調整に仕事が連日立ち会ったが、最後の日の夜は心配で、寝られなかった。しかし、頑張れば、働ける職場が、ある事が嬉しい。

 東大から、学生向けの書類が取り出せる自販機のBOXの製作依頼が来た。システムは新日鉄、プリンターはリコー、筐体は当社。この仕事は娘達でも出来るので、娘達に担当させる。次はインドを考えている。零細企業の会社で、年間2度も海外に学びに行かせるのも、狙いは、インドだ。中国はルートも出来たし、少し先も見えて来た。インドネシアとインドも大きい。特に、インドの飲料水は井戸水に頼っている。井戸の数は120万以上。私の会社は井戸水の浄化の専門会社だ。いよいよお呼びがかかる予感がする。聞くと、その内20万以上の井戸は、砒素に汚染されているらしい。中堅の商社を通じて時間2トンほどのROの浄水器を家庭向けに開発の打診が来ているが、インドは友人もいるので、是非やりたい。私は28歳の時に、中東の旅行に出かけた。イラクのウル地方で52℃の高温を経験した。20年後に起業したが、この過酷な経験が生きた。起業して苦労し、懸命に働き、つくばに来ても、一から再度、始めたが、確実に水の時代が来ている。水の仕事は、国が豊かになると、水の重要性が認識されだす。金融危機も迫って来ているかも知れない。アメリカも中国も危ない。日本はこのままでは、立ち行かない国になるだろう。色々考えて国内外で働く職場を考えている。